綺麗なものに惹かれる (蒼ver) 1

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夢を見た。

沢山の淡い光、人の声、物の音があふれている。


「蒼、林檎飴買いたい。一緒に食べよう」



(確か、高1の夏、まーくんと二人で行った祭り)

見てるこっちがつられて笑みを零しそうなほどの満面の笑みで俺の手を引くまーくんに。

苦笑しながらずるずると引きずられるように歩みを早める。
向けられる沢山の人の熱のこもった視線にうんざりしながらも、祭りに来るのは初めてで少し気分が浮足立っているのを感じた。


(……でも、さすがにまーくんほど顔に出てないと思うけど)


「人ごみが嫌いだから行きたくない」と拒否し続ける俺を、飽きもせず行こう行こうと誘ってくるものだから、結局根負けして行くことになってしまった。

ここに来ることになった経緯を振り返りながら、改めて目の前にいる人物に対して非常に弱いことを実感する。まーくんがきょろきょろ目移りしながら歩く様子を見て、意識しなくても自然に笑みが零れた。

先程から「わたがし食べたい」「たこ焼食べたい」なんて子供の様にはしゃぎながら、屋台に並ぶ色々な食べ物を見ては目を輝かせるその姿がなんだか可笑しくて。
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