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そのせいで浴衣から手を離してしまったおれに、くーくんの咎める声。


「ちゃんと浴衣持ちあげてて」

「…っ、あう、…ごめ…」


こくん、と素直に頷いて急いで浴衣を持ち上げてまたえっちな格好になるおれをよそに、くーくんが何故かおれの”ソコ”をじーっと見つめている。
恥ずかしすぎて本気で狂い死にそうだ。

至近距離でモロに視線を感じて、後ろに下がろうとするとその性器を掴んだ手にぎゅっと力が入って「…ぎゃ!や、」こんな鬼畜なやりかたするか、と睨む。


けど、そのおれの中心部に向けられていた意味深な視線がこっちに向けられた。



「……な、なに……?」

「相変わらず、まーくんのって俺のよりかなりちっちゃい」

「…ッ、?!!!?!!」



……ぽつりと無表情のまま呟かれた予想外の台詞に、グサって何かが傷ついた音がした。


「こんなに粗チンじゃ、どんな女も貰ってくれないよ」

「…ひ、ひど…」


別に誰か女の人が好きだ、とか女の人とどうなりたいとか、思ったことないけど、それでも酷いと思った。
あまりにもぼろくそに心を抉られて、…ぐす、と鼻をすする。


冷たい。


(…ばか。くーくんのばか…っ)


なんで、なんでそんなことばっかり言うの。

そして心を傷つけられまくって打ちのめされているこっちになんか構わず、おれの、その…、そ、粗チンを緩く弄んでいる。

……なんだよ。なんだよ、ばか。

さっき溢れたばかりの涙が、今度はぎゅうううと激しく締め付けられる胸によって更に量を増やして零れ落ちていく。


おんな、おんなって、今、くーくんはおれといるのに。



「……ばか、くーくん、の……うわき、もの…ッ…」

「…浮気者?」


怪訝に眉を寄せるくーくんに、怒る。


「そうだよ!…っ、そんなに、おれみたいな粗チンが嫌で、女の人がいいなら、…っ、」



(…どっか、いっちゃえ…)


なんて、本当にどこかへ行っちゃったらと思うと言えるわけもなくて、不自然に言葉を途切れさせて口を噤む。
下にいる彼の頬にぼろっと零れ落ちた涙に反応して、くーくんが顔をあげる。


「…なんでそんな話になるの」

「…だっ、て、っ」


キッと眉をへたんと下げるおれに、彼は零度以下だった瞳の温度をほんの少しだけ和らげた。
細められる瞳。


「…嘘だよ。別に小さくない」

「う、ほんと…?」

「うん。俺が女だったら、絶対に襲ってた」

「……へ?」

「…で、孕んで無理矢理まーくんに結婚させてたよ」



そうして怪しげな瞳でふ、と微笑んだ彼が、妖艶な仕草でぺろりと自分の指を舐める。


そして突然、

軽く唾液で濡らしたその指で…優しくなんかない、思いやりなんか一つも感じられないような勢いで容赦なく強く上下に擦られた。


グチッグチッグチッ…


「…っ、ぃ゛…っ!ぁ、!痛い、痛い…っ、や、いだ…ッ、い、…っ」

「嗚呼、痛かった?ごめん」

「…っ、ふ、ひ、っく、…っ、ひど、ひどい…っ、も、やぁ…っ」


大粒の涙を零して苦痛を訴えるおれに、謝る声。
だけど、その顔はなんか楽しそうに笑ってるように見えた。


親指の先で尿道口と傷口をグリグリと強く擦られ、そのせいで頭が変になりそうな程に腰が甘く痺れる刺激に反射的に腰を引いたけど、性器を掴んだ手にそれは許されなかった。

さっき優しくなったと思ったのに、勘違いだったらしい。

…その手に血が滲んでるのが見えて、視線をずらすとそれはおれの性器の傷跡から出たものだとわかって、余計に涙が溢れる。


「まーくん、知ってる?」

「…っ、ん、なに、ぁ…っを…?」

「他人の唾液って、傷口に付けるとばい菌として身体に入り込むんだって」


上から見える…さらさらの黒髪。
そして、睫毛を伏せた綺麗な顔が…ソコに近づけられる。
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