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そして、


「…勘違いじゃない、よな?」


その問いの意味は、泣いた原因がくーくんであってるかってことだろう。

…少し自信なさそうに答えを求めてくる声音に、



「……ん…、」


一度躊躇って、コク、と頷く。


と、


「……そっか。良かった」

「…――っ、」

「…嗚呼もう、本当にどうしようもないな俺。…嬉しくて堪らない」


ふわり。
その綺麗な顔に花が咲いたような笑顔が浮かんだ。

言葉通り、これ以上ないくらいに幸せそうに微笑んだくーくんに、指先で顎を軽く持ち上げられる。


そして、


「…っ、にゃ、」


…不意打ち、

おでこに微かに触れた柔らかい感触と、吐息。
頬を熱くしてバッとそこを手でおさえた。


(く、くーくんおでこにちゅーするの好きだな…!)


「…っ、で、で」

「はは、何回もしてるのに毎回真っ赤になるとこ、可愛すぎるよ。こっちの心臓がもたない」

「や、がが、」



もう自分で何を言ってるのか意味不明だった。
まさかこのタイミングで来ると思ってなかっただけに驚きすぎて目をぱちくりする。

嬉しいけど、嬉しいんだけれども…!脈絡がないというかもう少し心の準備というものが…、しかもわかっててやってきてるし、…でも幸せだったのでとにかく大好き。…とごにょごにょ心の中で嬉しいやら照れやらを呟いてみる。

けど、と罪悪感に胸を痛めながら俯く。


(結局、くーくんにまで謝らせてしまった…)


…自分のばか。何やってるんだ。

それでも、おれの言ったことが嫌な気持ちにさせたわけじゃないと知って心底ほっとする。


安心させるように頭を撫でてくれる手に優しい温度を感じて、
今日たくさん泣いたせいで引き攣れてきた頬をへへ、とだらしなく緩ませた。涙でほっぺがかぴかぴしてる気がする。




「…っ、わ、」



不意に彼の指が髪を梳き、目元に触れてきた。

…涙を拭ってくれてるのかな。

そう思って顔を上げると
む、と若干不機嫌そうに眉を寄せているのが見えた。



「それにしても勝手に目隠しを外すなんて…んー、だめだめなまーくんにはどうしてあげようかな」

「…っ、あ!」



しまった。

身体を引き戻すことに頭がいっぱいいっぱいで外したことをすっかり忘れてた。


さっと顔が青ざめる罪人のおれに対して、

唇の端を持ち上げた審判者くーくんはこの上なく楽しそうな表情で判決を告げてくる。



「後でお仕置き決定」

「え、ええ…っ、で、でも…っ、!」

「楽しみにしてて」

「あ、ちょ、まっ、だ、だって、あの状況では仕方なかったというか、なんというか…っ、」



慌てふためいて、ぱくぱくと意味もなく唇を動かす。


「◇」のような形に口を変えて、ぱたぱたと意味もなく浴衣の裾を振った。


一緒に部屋から引きずるようにして持ってきた手足の鎖もじゃらじゃらと音を立てて揺れる。



「だ、だって、あれはくーくんが、」



異議あり!と、眉尻を垂れさせてそう言いかけた



…その時、



「ね、真冬たちは今からお風呂にいくの?」

「…っ、わ…っ、」


突然ひょい、と覗き込んできた丸い瞳に大げさなほど心臓がびっくりした。

それがさっきくーくんと話していた人だとわかって、余計に混乱する。

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