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舌なめずりでもしそうなほど、楽しげな声音。


「そうだ。アイツ…一之瀬蒼は、お前には”守るため”だとか言い訳して穏便に収めながら、自分は他のヤツとヨロシクやってんだ」

「…っ、う、そ…」


自信満々なその声に、喉の奥が渇いてカラカラになった。


「俺が嘘を言うと思うか…?」

「…ッ、思い…ません…。でも…」

「そんな疑り深いお前の為に、ちゃぁんと証拠も持ってきてやった」

「…っ、」


上からバシャバシャと音を立てて何か大量の紙のようなものが降ってくる。
身体を起こす前に、俺の背中に馬乗りになったご主人様に髪の毛を掴んで頭を浮かせられた。
頭皮が引っ張られて焼けるように痛い。
でも、今はそんなことより、他の事に気をとられているから多少の痛みぐらいどうということもなかった。


「見たいか?」

「…、ぁ、」

「その沈黙は見たいってことでいいな?ちゃんと目に焼き付けろ。アイツの本性を」


戸惑って返答に躊躇っている間に、目隠しがスルリと外される。
久しぶりに外気に触れた目が、風に吹かれてちょっと痛い。
長い間目隠しをされていたせいですぐにうまく視点が合わずにぼうっと呆けていると、後頭部を掴まれてぐいと前に押し出される。


「おら、ちゃんとよく目を凝らして見ろ」

「…まだ、うまく、めが、みえな…っ」

「甘ったれたこと言ってんじゃねえぞ。ご主人様が折角持ってきてやったものを無駄にする気か」

「…っ、ぃ…ッ、ごめんなさ…っ」


頭を握る指の痛みに目をぎゅっとつぶって謝罪する。
そしてしばらくたつとようやくぼやけがマシになってきた。
視界に映る何か白い四角いものに、目を凝らして視点を合わせた。
徐々にそこに描かれたものの意味を、把握した。


「…っ、これ、」

「ああ。アイツが今他のヤツとセックスする関係にあるって証拠」

「…ッ、何、なんで…」

「お前は、捨てられたんだ。本気でお前のことを思ってアイツが離れたとでも思ってんのか?」


おめでたい奴、と鼻で笑ったような嘲り声。

床に散らばっている写真を見た瞬間、胸の奥がぎゅっと潰れた。
キスしてる写真。結合部が映った写真。抱きしめ合う写真。
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