2

嫌だと思いながらも、本気で自分から逃げるような真似はしなかったはずだ。


本人が気づいていたかは知らない。

だが、自分を見てくれる人を求める柊真冬のようなタイプは、

絶対にいかなる時でも自分を優先し、大切にしてくれる一之瀬蒼のような人間に一度出会えば、もう離れることなんかできなくなる。


まぁ、性的なことは嫌だとしたって、そんなことよりも誰かに傍にいてもらえることがコイツにとっては一番喜ばしいことのはずだ。


しかし、俺が見せた物によってコイツは救いを失った。

今までは一之瀬蒼という存在によって、俺を心の底から求めることはなかったが、今は違う。

コイツは捨てられたと思っている。

心の奥底から嫌だと思うセックスまでして、そこまでして一緒にいたいと思ったヤツに捨てられたと思っている。


そして、俺がいなければ、また元の一人に戻るとわかっているはずだ。


誰かに依存しないと生きていけない人間は、堕ちるのが早い。

……だから、今の俺の言葉をコイツは全部素直に受け入れてしまう。


「一之瀬蒼は、お前を助けに来ない」

「…っ、ぁ…ッ、」


その言葉を耳元で囁いてやれば、大げさなほどその身体は反応する。
そうだ。それでいい。絶望しろ。憎悪で胸をいっぱいにしろ。


本当は一之瀬蒼は、柊真冬がここにいるということをしらない。


写真だって、うまくアイツが望んで”そういう行為”をしているように少し画像をいじって柊真冬に誤解させるように細工もした。


そもそも、ずっと目を塞がれていて視力の弱った柊真冬に、ちゃんと写真が見えるわけないんだ。
写真を見せて、俺の言葉でもっとそれに見えるように誘導してやれば簡単だった。


柊真冬の心は今悲しみに埋め尽くされている。絶望している。
コイツが最も恐れていた”誰かに見捨てられる”ということを味わったせいで。


それに、一之瀬蒼が今コイツの状況を知ってここに助けに来ようとしても不可能だ。


アイツは、今の柊真冬よりもずっと死に近い状態にいるのだから。
セックスだって、もうほとんど死んでいるような状態で色んな女と無理矢理ヤらせたんだから抵抗なんてできなくて当たり前だろう。


「…っ、ぁ…ッ、や…っこわ…っ、痛…っひぁ゛あああ――…っ」

「あー、本当、苦しみに耐える声ほど面白いもんはねぇ」


興奮に胸を高鳴らせながら、最奥までぶっこんでいたアナルプラグを勢いよく抜いた直後、すぐに躊躇なく指先をグチャッとナカに押し込めば、甲高い絶叫にも似た悲鳴を漏らす。


「…っ、ぁ、ひ…っ、」


びくびくと痙攣している狭い肛門はぎちぎちにそれを締め付け、穴はそれを離すまいと咥え込んでいる。

無理矢理突っ込んだ指を激しく動かしながら音を立ててナカを掻きまわす。


「ぁ゛…っ、や、ぁ゛…っ、ぁ…っ、」


身体は死ぬほど気持ちいいはずなのに、毎日バイブやら注射やらで精液を吐きだし続けていた家畜のチンポは何も吐きだせずにただびくびくと異常なくらいに震えていた。

…まぁ、こんだけ出してりゃ出なくもなるか。


「ぁ…っ、痛い…ッ痛い…っ」

「媚薬打ってやってんのに痛いわけないだろ」


無理矢理勃起させ過ぎたせいで血が出てるのに、それでも薬の効果で諦めずに勃起して硬くなるちんぽをどうにかして収めたいのか何がしたいのか、手でチンポを握ってひぃひぃとボロボロと大粒の涙を零している。


腰を上げて、壁の方に歩き始めれば、下の方の服の裾を掴まれた。
極限状態で、快感に震えて、苦痛に、悲しみに、絶望に耐えている状態のくせに、俺を引き留めようとする手。


「…っ、いか、ないれ…ッ」

「どこにもいかねぇよ。何週間も風呂入ってないから、綺麗にしてやろうと思っただけだ」


よくそんな状態で俺が立ったことに気づいたもんだ。


喉の奥で笑って、部屋の隅に歩いてそこに置いてあるホースを握った。
蛇口をひねって、そのホースを家畜にかける。


「…っ、…、ぶは…っ、げほ…ッ、み、ず…?」


何の言葉もなく頭からかけてやれば、鼻と口に入ったのか、水を吐き出している。
家畜の周りにある汚いモンが排水溝に流れていく。


そして、数週間ぶりに自分のかけられたものが水だと理解したのか、酷く嬉しそうな声で俺がかけてやっている水を飲もうとした。


しかし、そんな家畜の期待に応えるわけもなく、すぐに蛇口を緩めて、その勢いを減らして嗤った。


「なぁ、お前水が欲しいって言ってたよな?」


笑顔を浮かべて、そう問いかけた。
prev next


[back][TOP]栞を挟む