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「…ッ、」


…わざわざ痛みを加速させるような真似をするなんて馬鹿げている。

俺様にとって何の利益もないコイツに媚び打ってどうなるっていうんだ。

アイツの傷つく顔が見たいから?
悔しがる顔が見たいから?

今更、そんなことして何の意味があるんだっつーの。

この場には今アイツがいない。
つまり、ショックを受けた顔も見れない。

だったら、この行為には何の意味もないんだよ。

そもそもコイツと会話するだけでも反吐が出る。
だだのエネルギーの無駄遣いだ。痛みが増すだけだ。
死が早まるだけだ。


(…これ以上、こんな利用価値のない奴に関わるべきじゃない)


結局後でアイツの制裁を受けるだけじゃねえか。

馬鹿だ。
馬鹿すぎる。


「…ひ、」


力を入れた腕の中に閉じ込めた”ソレ”から、小さな悲鳴が上がる。
同時に触れている部分から激痛が生じて俺も声を上げそうになった。


「っ、」


無意味。

そうわかっているのに。

じゃあ、なんで


「…クソ…っ、マジでふざけんな…」

「…ッ?!、」


…なんで、コイツを抱き締めてんだ。

以前の俺だったら目も当てられないほどゴミでカスな行動を犯している。

頬に触れる髪と肌の感触。
浴衣のはだけている家畜の肉体。
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