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堪え切れない涙が、頬を伝って草むらに零れていった。
頭から、顔から、腕に伝っている粘稠液が、その臭い匂いが嘔吐感を込み上げさせる。


「……う、ぁ…」


口内に感じるそのねばねばしたものを感じて、思わず涙交じりのうめき声が零れた。
気持ち悪くて口の中を今すぐ洗い流したい。
泣いたって何も変わらないけど、悲しくて、悔しくて、視界がぼやける。
白い液体と混じって、透明な涙がぼたぼたと地面に染みを作った。


「ひぁ…」

「うわ、真冬クン卑猥ー、やーらーしーいー」


抱く様にして男に精液がべっとりついた頬を舐められて、寒気が走って身体が震えた。


「いやー、イケメンくんの顔にかかる白濁液ほど、そそるものはないっすねえ」

「……ぃ゛…っ、」


舌が頬をなぞって耳に到達したソレに、耳を噛まれる。
痛みに呻けば楽しんでいるように舌を耳の中に差し込まれ水音が鳴るほど舐められ、舌を這わされる。


「…あ、ねぇ真冬クン、これネックレスだよね」

「…っ、え…?」

「こんな可愛いのするんだ?」


首元を引っ張られるような抵抗があって、顔を上げるとにやにやと何か光ものを手で弄んで、へーっと感心したような表情を浮かべている男がいた。

その、手にあるものを見て…青ざめる。
体中の血が凍ったような感覚になった。

(それは、蒼からもらった、大切な…)

”うさぎと月の組み合わせは、幸運を運んできてくれるんだって”

あの時の蒼の笑顔が脳裏に浮かぶ。
考えるより先に、声が出ていた。


「…っ、離…ッ」

「もーらいっ」


キッと睨んで奪い返そうとしたその瞬間、首に痛みが走る。
ぶちっと何かを引きちぎる音が耳に届く。
一瞬、何が起こったか理解できなかった。


「ぁ…っ」


………チェーンを引きちぎられた。


「返せ…っ、返、せ…ッ」


それだけは、それだけはどうしても渡すわけにはいかない。
取り返そうとしても、他の男達に後ろから弄ぶように抱きすくめられ、身体をまさぐられる。
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