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……こんなことじゃだめだ、と思っても、意識が吸い寄せられるのを止められなかった。
「…それに、まーくんの血ならまざってもいいよ」
「ぁ…っ、」
軽く睫毛を伏せ、薄く整った唇から覗く赤い舌にぺろ、と血の滲んだ指を舐められ、…ドク、と鼓動が跳ねた。
「んぅ、…っ、や、」
ゆっくりと消毒するように舌を這わせられてる。
…舐めたその舌に血がついたのを見て、更に腹の奥が疼く。
ゾクゾク腰が震え、「もう、い、い…から」と、顔を背け、いそいで手を離した。
腰に回った腕も外され、このまとまらない感情から解放されることに安堵の息を吐く。
「まーくん、こっち向いて」
「…ん?なぁに?」
熱い頬が冷めてくるのを感じ、緩んだ気のまま、振り返る。
顔を上げれば、酷く愛おしげに細められた目に見つめられ、意識するより先にぱっと視線を他に逃がした。
(…そんな表情で見られると、誤解しそうになってしまう)
嬉しさ半分、沈む心に瞼を伏せる。
…と、頬に触れてくる手。
滑らかな頬を優しくすりすりと擦られ、頬に軽くかかっている髪を耳にかけられる。
……大好きなペット、…もしくは昔に見た恋人にするような仕草にも似ていて、
「な、なに…?」
くすぐったい。けど、嬉しい。
多分実際はそんなに経ってなかったかもしれないけど、体感時間では結構長いこと、そうされていた。
頬を撫でる手の感触が心地よくて、されるがままになる。
再び込み上がる熱に、…どうしていいものかと視線をそらしたまま上ずった声で聞いてみた。
「まーくん」
「…う、ん…」
今、おれどんな顔してるかな。
そ、そりゃあ真っ赤で可愛さなんかまったく敵わないだろうけどさ、
澪よりもちょっとはおれのほうが良いって思ってもらえてないかなって、そんなはずないのに驕ったことを考えながら返事をする。
と、
「…俺のこと、好き?」
「……っ、」
その言葉に
ズクン、と胸を貫かれたような衝撃が身を襲った。
(……え、…?)
いつもなら、軽く答えられたはずだった。
けど、違う。
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