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その反応が予想外で、顔を上げると彼はお腹をおさえてゲラゲラ笑っていた。


「なんとなくわかってた。絶対振られるって思ってたからかもしれないけど、なんかあんまり傷つかなかったな。」

「……へ」


その言葉通り、本当に楽しそうに笑う俊介にぽかんとする。
やっぱり、こういう時でも俊介は爽やかに笑っていて。


「真冬がそういうなら、ずっと友達でいるのもいーかもしんねーな」


ははっと明るく笑って、そう言ってくれることにほっとする。
俺も安堵に肩の緊張を解いて頬を緩めて笑うと、軽くデコピンされた。
う、と眉を寄せてそこを手で押さえると、彼は俺を見て不意に真剣な口調で言う。


「お前は、早く自分の感情を理解できるようにならないと」

「…俺、何か間違ってる?」



何回考えても、自分の感情のどこを理解できないのか…正直わからない。
自分のことなんだから、自分で理解できていると思ってる。

…いや、思ってた。

でも、俊介の言葉を聞いて分からなくなってそう尋ねてみると、彼は悪戯っぽい笑みを浮かべて「自分でわかるようになるまで、教えてなんかやんねーよ」と言った。


「う…」


なんか自分で分かる日が来る気がしない。
そう思ってうめき声を零すと、俊介が苦笑しながら何かを指で指した。
そっちに目を向けると、酷く不機嫌オーラを醸し出している蒼がいて。


「ぁ…っ」


まずい、またこんな場面を見られてしまったと焦って、どうしよう。こんな状況のまま帰っていいのかと俊介の方に目を向けると、目を細めて俊介が手を上げる。


「じゃあ、また明日な。真冬」

「う、うん。俊介…っ、また明日」


その返事にほっとして、手を振って蒼のところへ走った。

蒼はずっと帰り道ムッとした表情をしていたけど、さっき話していた内容を説明すると少しは機嫌がマシになったらしかった。

そして、板本君から聞いたのか、蒼は俺と板本くんが今日友達になったことを知っていた。


「あいつは危ないから、今後は近づかないようにして」

「…危ない…?」


何故か少し強めの口調で言われて、戸惑っていると約束してほしいともう一度強く言われる。

結局できるだけ近づかないようにするってことで落ち着いたけど、それでも彼の表情は硬いままで、結局何も教えてくれることはなかった。

――――――――――

何が、あったんだろう。
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