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何かで血をおさえなければと急いでポケットをまさぐる。
「こんなの放っておけば治るよ」と、どうでもよさそうに答える蒼に、「だめだって。ばい菌入るから」と慌てて、取り出したハンカチをその怪我のところにあてる。
ちゃんと洗濯してるから、清潔なはず…と自分で思いながら、おさえていると、ふ、と蒼が困ったような、でも嬉しそうな笑みを零した。
「ちゃんと、風呂に入ってきたんだけどな」
「…?」
(…お風呂?)
首を傾げると、怪我をしてないほうの手でわしゃわしゃと髪を掻き混ぜるように撫でられた。
「わっ、なにするんだ…っ」
「いや、可愛いなーって」
「…っ、い、いきなりなんだよ…」
ぷいと顔を背けて不満げな声を出す俺を見て、また声をおさえてわらう蒼にむっとする。
くそう。なんなんだ。人が本気で心配してるのに。
「ああ、そうだ。まーくん、最近何か悩んでたことがあったと思うんだけど」
絆創膏を貼る俺を見下ろし、彼は微笑む。
それに対して答えるより早く、詠うような声音が続けた。
「もう、多分解決したんじゃないかな」
どうして、蒼がそんなことを知っているのか。
どうして、そう思うのか。
曇り空を見上げるその綺麗な顔は酷く穏やかで、何故かすごく満足げな表情を浮かべているような気がした。
――――――
知らない間に、いつの間にか何かが変わってしまう。
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