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何か、とてつもなく嫌な夢を見た気がした。
起きた時もそれはまだ現実だったとしか思えなくて
心臓がバクバクして、冷汗で身体がぐっしょり濡れていた。
見たこともない暗い部屋で、ざらざらとした灰色の固い床に、
おれの手には鋏が握られてて
「…っ、ぁ、」
喉の奥からひゅっとおかしな音が漏れた。
いや、そんなはずない。
ありえない。
おれは、 そんなこと しない。
「――……」
白く淀んだ視界で、自分が畳の部屋に寝ていることに気づく。
身体の下にはシーツ、上には布団、
…横になってるおれの、目の前には
「…くー、くん、」
「…ん、…何…?まーくん、どうしたの…?」
あっという間にじわりと滲む世界、
おれの声に、焦ってその両頬を包むようにぺたぺたと触れる手に、彼は寝起きの表情でゆっくりと薄く目を開けた。
自分の手に、新しい包帯が増えていることに気づく余裕はない。
「っ、良かった、くーくん、いる、ちゃんと、いる…」
「…いるよ…?」
ぼろぼろ泣きながら存在を確認したくて身体に触っていると、可笑しそうに微笑み、またその柔らかい笑みを見て、涙が溢れる。
「生きて、る…生きてる、…いる、」
「……」
「こわい、こわくない、もうこわくない、暗くない、痛くない、辛くない、」
どうしてか喉がひりひりとして、掠れてうまく声が出ない。
この震えが何からくるものなのか、もう思い出せなかった。
けど、さっき見たモノは今までの人生で何よりも恐ろしいことで、ありえないことで、してはいけないもので、
そんな、既視感だけが残っている。
「まーくん、…身体、大丈夫…?」
「なに、?からだ、って、」
「……昨日…の、…いや、何でもない」
くーくんの背中に腕を回して抱き締めて、そうしたら頭の上で少し困ったみたいに、でも優しい吐息が零されて、よしよしってしてくれて、けど、それでもまだ止まらない。
…と、ふいに、気づい て
「…これ…、なに、…?」
鼓動が、止まりそうになる。
チャリ、と肌に触れる冷たいもの。
くーくんが、…珍しくネックレスをしていた。
自分で買う感じじゃない。
きっと、くーくんはこういうのに興味ないから、
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