12

なら、

…首にかけられてるチェーンと、その先にある銀色と深い藍色の混じったリングは、

(…なに、それ。なに、そのネックレス)


「どう、して…」

「…貰ったんだよ」


震える声に、…ほんの少し躊躇いがちな返事。


「誰から、貰ったの?」

「………」

「…もしかして、澪に、もらったの…?」


くーくんは答えない。
それどころか、見上げるおれから逸らすように視線を伏せて。

…肯定、としか思えない。

だって、違うなら否定するし、じゃあ、今の反応は、

おれが傷つくってわかってて、なんで今わざわざつけて


「…っ、…」

「…まーくんは、見覚えない…?」


おかしいほど震える感情にどう対応していいかわからない。
磔にされたように動けないでいると、不意に聞かれた言葉に、「みおぼえ、?」知るわけない。ネックレスなんて、おれ、そもそも、今までみたことなかったのに


――『うさぎと月の組み合わせは、幸運を運んできてくれるんだって』――


「…――ッ、や、」


や だ、

耳に響く声に、塞ぐ。
知らない。
しらない。

おれは、そんなこと言われてない。

それは、おれじゃない。

『おれ』が、一緒にいたくーくんじゃない、


「…は、は…おれは、おれ、だもん…、ね…」


涙で溺れそうになる。

くーくんと恋人になるって約束した、おれ
くーくんと一緒の誕生日って言った、おれ
くーくんがこれからずっと一緒にいようって言ってくれた、おれ

全部、キラキラしてるのはおれの、記憶で

…それだけが、おれの全て だから


「…なく、ならない…、で…」


手探りで、探す。
求めて、焦れて、しがみついて


「もう一回、寝る、から…くーくん、朝まで、一緒にいて、…、起きた時も、傍にいて、ね…」


ぎゅってその着物の裾を掴んで言えば、「…うん」って返す声と抱き締めてくれる腕。

何故だか身体全身がやけに痛むように感じながらも、おれは現実から逃げるように再び目を閉じた。
prev next


[back][TOP]栞を挟む