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なら、
…首にかけられてるチェーンと、その先にある銀色と深い藍色の混じったリングは、
(…なに、それ。なに、そのネックレス)
「どう、して…」
「…貰ったんだよ」
震える声に、…ほんの少し躊躇いがちな返事。
「誰から、貰ったの?」
「………」
「…もしかして、澪に、もらったの…?」
くーくんは答えない。
それどころか、見上げるおれから逸らすように視線を伏せて。
…肯定、としか思えない。
だって、違うなら否定するし、じゃあ、今の反応は、
おれが傷つくってわかってて、なんで今わざわざつけて
「…っ、…」
「…まーくんは、見覚えない…?」
おかしいほど震える感情にどう対応していいかわからない。
磔にされたように動けないでいると、不意に聞かれた言葉に、「みおぼえ、?」知るわけない。ネックレスなんて、おれ、そもそも、今までみたことなかったのに
――『うさぎと月の組み合わせは、幸運を運んできてくれるんだって』――
「…――ッ、や、」
や だ、
耳に響く声に、塞ぐ。
知らない。
しらない。
おれは、そんなこと言われてない。
それは、おれじゃない。
『おれ』が、一緒にいたくーくんじゃない、
「…は、は…おれは、おれ、だもん…、ね…」
涙で溺れそうになる。
くーくんと恋人になるって約束した、おれ
くーくんと一緒の誕生日って言った、おれ
くーくんがこれからずっと一緒にいようって言ってくれた、おれ
全部、キラキラしてるのはおれの、記憶で
…それだけが、おれの全て だから
「…なく、ならない…、で…」
手探りで、探す。
求めて、焦れて、しがみついて
「もう一回、寝る、から…くーくん、朝まで、一緒にいて、…、起きた時も、傍にいて、ね…」
ぎゅってその着物の裾を掴んで言えば、「…うん」って返す声と抱き締めてくれる腕。
何故だか身体全身がやけに痛むように感じながらも、おれは現実から逃げるように再び目を閉じた。
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