8

蒼は何がしたいんだ。
俺をこんなに苦しめて。
こんなことに、何の意味もないのに。

酷い。
酷い。

蒼のばか。ばか。


「…っ、なんれ、なんれこんなに…ッ、いじわる…ばっか…ッ」


喘ぎ声に混じって、辛くて、悲しくて、嗚咽が漏れる。
ぼろぼろと涙を零しながらその服を掴んで縋る。

待って。

待って。

やだ、おいていかないで。やだ。



「あーあ。まーくんから求めてくれることなんてないから、勿体ないんだけど」


この後、用事あるんだよな。

悲しげに吐息を零して、そう呟いた蒼に優しく抱きしめられて、ぶわっと涙が溢れる。
見えないけど、いつも着ている浴衣だろうそれを掴んで思う。

こんな状況じゃなかったら、どれだけいいんだろう。

今の自分はその温かい感触に、安心よりも快感を求めようとしてしまう。


「あおい…っ、まって…っ」


やだ。やだ。やだ。

恐怖が胸を占める。

いかないで。
ひとりにしないで。


言葉にできないほど寂しい気持ちが胸いっぱいに広がって、待ってくれと服を強く掴んで縋る。


「あー…」


真っ暗な視界の中、蒼のため息のような呆れた声が聞こえてきて、そんな声に震えて、怯えてその服から手を離そうとした。

(…怒ってる…)

ああもうどうしようと、こんな時でも性器はどくどく脈を打ってるのがわかるし、そのせいで無意識に身体が疼いて動いて鎖が音を鳴らしてるし、変な声は漏れるし身体は熱いし呼吸はできないし、そもそも蒼をひきとめてどうするつもりなんだと、そんなことが頭の中でぐるぐる回って。

結局名残惜しげに、その服から離した手を、きゅっと掴まれる。
指と間に絡められた指が、きゅっと俺の手を軽く握る。
汗ばんで熱を持った自分の手は、触れると余計に蒼の手が冷たく思えた。



「………そういえば、昨日あいつにフェラされてたっけ」

「…んぅっ、…ふぁ…?」


口から漏れる声を必死に抑えているとぽつりと呟くような声が聞こえる。
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