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二人とも選ぶことなんてできない。

それに、どうせおれは最後には選ばれないから。

なら、今すぐにでも解放して楽にしてほしい。

…一時的にここにいるとしても…もしかしたら、おれが今くーくんにしたみたいに澪を傷つけるかもしれないのに。

おれを失くすのとは比べ物にならないほど、きっと澪を失うことを恐れているくせに。

そんな中途半端な優しさで、おれのために一緒にいようとしてくれなくてもいい。

もし、おれがさっきみたいに自分を抑えられずに澪に手を出したら、…くーくんは絶対におれを赦さないだろう。

……おれなんかより、尚更澪のことは手放せないはずだ。

だって、別れてしまったらそれこそくーくんの幸せも消えてしまう。

おれじゃ、だめだから。

その場所にいることができないから、紛い物の関係が苦しいから、もう耐えられないから、
おれは、くーくんの目の前から消えるつもりだったのに。


「いいよ。まーくんがここから逃げたいと望むなら」

「…っ、」

「でも、本当に俺がいなくても生きていけるの?」


見透かしたような台詞。
…違う。全部、確実に心のうちまで把握されてしまったいる。

びく、と僅かに震えた肩を、くーくんは見逃してくれなかった。


「そ…んな聞き方、ずるい…」

「好きだから、俺はまーくんがいないと嫌だよ」


頬を濡らす雫を、頬を包むようにして優しく触れて拭われる。
独占欲を露わにした台詞に、身を焦がすほど感情が揺れてしまう。

……それは、違う好きなのに、

わかってるのに、期待してしまう。

もしかしたらって
もしかしたら、未来があるのかなって


「…なのに、出ていくの?」

「だ、って、おれは、」


吐息が触れるほど近くで見つめられて…、こく、と勝手に喉が鳴る。

変わらず今まで見た誰よりも遥かに綺麗で、大好きな顔。

こんなふうにされたら、どうやったって勝手に怯みそうになってしまう。

……流されるな。怯むな。

もう、くーくんの前からいなくなるって決めたんだ。

だから、ぎゅっと目をつぶって、離れる。
「おれは…っ、」と決死の覚悟で発して、


「せっかく、今日から傍にいられるのに」

「…ぇ、?」


呟かれた声に、…続きの言葉が消える。
呆然と見るおれに、彼は少し黙って「まーくんの考えてる通りだよ」と答える。


「俺はまーくんだけじゃなくて、澪も捨てられない」

「……っ、」


わかってはいた。
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