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忘れて ことが るのかも知らな のに、何を思い出 ことがある?


「…嘘で ょ。 える」


「酷 と思 ない?」と低 詰る音。

頬に強い衝撃が走る。


「…っ、…?」


滲み出る怒りを抑えられない口調が近くでして、叩かれた、と気づき、肩を強く掴まれた。


「完璧で美しすぎる彼以上の理想の人なんていないのに、その存在を奪おうとした犯罪者が傍でそうしたことすら忘れてのうのうと暮らしてるなんて」


唐突に響いてきた言葉に、聴覚が揺れ、世界がぐらつく。


「何も知らないふりして、御姫様ぶるのもいい加減にして」

「っ、」


過去、枷があった場所。
その痕の上から痛いほどに握られ、振りほどこうとすれば「そういう態度が鬱陶しいって言ってるの」と強い声で妨げられた。


「彼が命にかかわるほど深い傷を負わされたのも、そのせいで左腕の可動域が狭くなったのも全部あんたのせいなのに、その自覚がないなんて」

「……っ、」

「酷いと思うでしょ。ねぇ」


朧気に反応すれば、強くなる怒気。


「本当に思い出しているのだとしたら、いや、思い出してないのだとしても、もうあなたには彼の傍にいる資格はない」


資格?
そんなもの、他人にどうこう言われる筋合いなんてない。


「あのね、真冬。まだ貴方は自分が彼にとって必要だと思いたいのかもしれないけど、未来のない行為に意味はないんだってそろそろ気づいたら?」


ねっとりと口調が変わる。


「でも、私は貴方とは違う」


明確に声を強くして、野卑な揶揄と嘲笑に満ちた笑み。


「男同士の無駄な行為、…無意味なセックスとは違うの。ちゃんと愛し合った証を残せるのよ」

「……ぇ、…?」


彼女は、満たされた表情で下腹部のあたりを撫でる。

まるで、まだ残っているように、
まるで、そこに大事な何かがあるように。

どうして、そこを愛おしげに撫でるのか、その答えを考えつくまでにかなりの時間を要した。


「私、これでも真冬には感謝してるんだよ。真冬のおかげで、彼は……彼自身の意思で私を抱いてくれる。求めてくれる。愛してくれる」


二人の行為を思い出し、暗がりでも見えた、丁度股の間ぐらいから床に零れ落ちていた液体を思い出す。

……いや、まさか、と思いつかなかったことがおかしいほど、呆気なくその答えにたどり着いては打ち消したくて首を振る。

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