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……けど、


「…っ!!〜〜〜、っ、も、ぅ、ぃい゛…っ、」


ぎゅううと心臓から下腹部が悲痛でもっともっと苦しくなる。

澪との関係の深さを感じさせられ続けるのが耐えられなくて逃げようと手で肩を押す。

もう片方の手を床に押し付けられたままで身体を離すこともできずに、強引に味わわされる。
無理矢理、見ていない二人の時間を体感させられる。

くちゅ、と音を鳴らして身体が離れた瞬間、


「愛してる」


ゾク、と身体の奥が喜びと泣きたくなるほど、愛おしそうな目で熱い吐息を零し、見つめられる。

きゅーーと下腹部全体が甘く痺れた

瞬間、ビクンっと腰が痙攣した。
…じゅわ、と股間周辺が濡れる。

ガク、ガク、と下半身を中心に大きく収縮と痙攣を繰り返し、荒く、浅い息が零れる。


「ぁ、…」


漏ら した。
……他の女の人に向けて囁いた言葉で、イッた。


(…おれ、)


信じられない。悔しい。

屈辱で、悲しい。

ぶるぶる震え、涙を零す。
愕然としている間に再び薄く柔らかい唇が俺のものに重なり、求められるように舌を擦られる。


「可愛い。そんなに嬉しかった?」

「…っ、」


クス、と零される笑みに、返す言葉もない。


「……嗚呼、残念だけど。時間になっちゃった」


視線が逸らされ、ふいに壁につけられている時計に目を向け、思い出したように呟く。

呆気なく離れていく重みと感触に、思わず裾を掴んだ。
「待って」と引き留めた声はひどく掠れている。


「今日も、呼ばれてるの…?」

「うん」


どうする?と、最近はもう聞いてきさえしないけど、彼の美しい顔に見下ろされて……ぐ、と喉を上下させる。


「……どうして、……澪とする時……ゴム、つけてない、…の?」

「……」

「子ども、こども、とか、できて、くーくんは…っ、」


それでもいいと本当に思っていたのかと、聞いても仕方がないことが、口から落ちる。
何故そのことを知っているのかと不思議に思うこともなく、彼は綺麗な微笑みを浮かべたまま、口を開いた。



「結婚するんだから、できても困らないよ」

「っ、」


ズキ、と抉られた痛みに、嗤ってしまう。
「跡継ぎがどうしても欲しいんだって」と、裾を掴んでいた俺の手を取り、絡めるようにして手を繋いだ。

目線を合わせるように畳に膝をつき、他人事みたいにそう言葉にした唇で、舌で、機嫌をとるように、慰めるように口づけられる。

……死にそうになるくらい胸が痛いのに、…それでもこれ以上の幸せを考えられないほど気持ちよくなる。


―――――――――


(こんなことをしてはだめなのに、)

(こうされるとどうしようもないほどに欲しくなってしまう)
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