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今も、こんなに普通に過ごしてるじゃないか。

……当たり前みたいに、隣にいるじゃないか。

全部、白状してしまいたい感情に駆られた。
思い出したと、あの日の全てを、思い出してしまったと、言ってしまいたい。


でも、そうしたら、どうなるんだろう。

俺を見る目が変わるのは見たくない。
軽蔑も、嫌悪も、憎悪も、他もどれもが、怖い。

どんな感情を向けられても受け入れなければならないのに、臆病者で弱虫な自分にはそれが想像もできないほど恐ろしい。


……絶対に、今度こそ本当に俺は傍にいられなくなる。


自分を殺そうとした犯罪者を傍に置く道理はない。
どう考えても、彼は思い出していないと思ってるから一緒にいてくれている。

昔のままだと思っているから、今もこうして笑いかけてくれる。

……どれだけ俺が願っても、蒼にしたことはもう取り返しがつかなくて。

謝ったって、泣いて土下座したって、時間は元には戻ってくれない。

どこまでも自分勝手な都合ばかりで、結局蒼の気持ちは何も考えられていない。
蒼のためを考えたら、今すぐに白状してしまうべきなのに。

それがどうしてもできない。

……自覚はしていても変えられない。自己中な思考が心底嫌になる。


「……まーくん、?」


どうしたの、と心配そうに声をかけられ、自分の身体の反応に気づいて必死に押しとどめた。
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