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あの日から、『ご主人様を殺した日』から、
何もかも、思い出せること全てを思い出しては泣いて嘔吐し、終わったと思ったらまた嘔吐を繰り返した。
やっとそれが少しは落ち着いてきたと思ったら、
……今度は、…結婚…？
（澪が奥さんになるって、何、…？）
どうせすぐ別れるんじゃなかったのか。
蒼にとって、そこまで彼女は大事だってこと…？
「……まーくん、」
「…や、…いや、だ…っ、」
耳を手で覆って、背を向けたまま首を横に振る。
聞きたくない。
もう、何も知りたくない。
涙を零し、血の気が引き、吐き気を訴え、気づいたら嘔吐してしまいそうになる。
込み上げる嗚咽に口を塞ぐ。
手に零れてくる涙でぐちゃぐちゃに濡れて。
自制ができないほど、心が傷つき、ふるえていた。
……そうだ。
蒼は、ほぼ毎日彼女とセックスしてた。
現実に、目の前で、するところまで見せられた。
絶対に俺にはしてくれないのに。
……切望して、望んで、俺がずっと欲している身体で別の女の人を抱いて、腰を振って、
何度も、何度も何度もなんどもなんどもなんどもなんども――……
澪もそれを喜んでいた。
あんなにも満ち足りた表情で笑っていた。
『彼は……彼自身の意思で私を抱いてくれる。求めてくれる。愛してくれる』
だから、澪はそう言ってたのに。
『だって、彼の温かい精子がここを…子宮の中を満たすたびに、幸せを感じるもの』
澪は、そう言って、何度もその可能性を匂わせていたのに。
……まさか、 結婚 する なんて、微塵も考えなかった。
「……っ、ぅ、ぐ、…」
泣きすぎて、うまく息ができない。
床にへたりこんだまま、無駄かもしれないけどせめて声をおさえて涙を流すのが精いっぱいの抵抗だった。
肩に、手が触れる。
「…っ！！触らないで、出て行って…！！もう、俺に」
身体を捩り、拒絶する。
関わらないで、と言おうとした言葉は涙で溺れて声にならなかった。
今までみたいに触れようとしないで。
何も変わらないような態度で接しようとしないで。
……どうしたらいいかわからなくて、泣き続けるみっともない俺を、見られたくない。
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