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酷い人だと思う。
俺を抱かないのに、好きな人と行為をしているところまで見せつけて、
それなのに、こうして優しくしようとする。
「だ、騙されないからな…っ、できない約束なんかしなくていい…っ、だって、澪が奥さんになるって、」
「…結婚しても、まーくんを手放す気はないよ」
「……………ぇ、…?」
「今の関係を変えるつもりはない」と呟かれた言葉に、何を言われているのかと思った。
身体から、すっと温度が消えていく。
「どういう、意味、?」
考え、到達した結果に、……はは、と思わず笑ってしまう。
ぎゅーって、胸が、下腹部が締め付けられて、泣き喚きたくなる。
……ああ、そっか、と零した。
「澪は大事にしたくて、一番好きな人だから奥さんにしたいけど、その価値もない、どうでもいい俺は、使える時に使いたいって、こと…?」
「……そうじゃなくて、」
違うとでも言いたげな声に、「いいよ」と言葉を被せた。
抱き締められたまま、涙で濡れた唇を震わせて、答えた。
「いいよ。それでも、くーくんが望むなら…いいよ。俺を好きにして、いい」
「……っ、」
受け入れると予想していなかったのか、動揺したような反応を見せて、少し離れる。
泣いてて滲んでいる世界で、俺を見ているだろう彼にできるだけ精一杯頑張って微笑む。
この関係性を受け入れたら、俺は一生苦しむことになるんだろう。
蒼と、蒼の好きな人の愛し合う姿を傍で見続けることに耐えられるのかはわからないけど。
……傍にいたいのは本当で、好きになってもらいたかったのも本当で、
ありえないことだって知ってても、離れるなんて最初から無理だったんだ。
それに、
よく考えてみれば、…考えなくても、どうして蒼が俺を抱こうとしなくなったのか、わかった。
何度もご主人様や市川って人とそういう行為をして、精液だけでなくおしっこまで肚の奥に出された。
(……汚い、からだ)
もう人ではない。便器だと罵られてもおかしくない。
……俺はもう、蒼に抱いてもらえる『人間』ですらなかった。
見ただけでわかるだろう汚い穢れた身体と、妬むしかできない心。
こんな奴、愛してもらえるはずもない。
「あ、でも、だったら、」
渇いた唇を舐め、涙の味で舌を濡らしながらひとつの提案を思いつく。
「誰でもいいから、俺の夜の相手をしてくれる人を紹介してほしいな」
「……夜の、相手…?」
「俺だって男なんだから、たまにはしたくなるかもしれないだろ。でも、くーくんは最後までしてくれそうにないから」
少しぐらいならいいだろうと思った。
今更こんなことを言ったところで、彼に何か影響があるとも思えないけど。
自分の言葉すら汚いと感じる。
言葉と共に黒い穢れを吐き出した。
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