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「くーくんにとって……俺って何?」


いらなくなったのかと思えば、離れようとすることは許してくれない。

かと思えば、澪を好きだと、……俺には絶対にしない表情で言葉にする。

見ていれば態度ですぐにわかるのに、それでも俺が遠ざかるのを嫌がるようなそぶりを見せる。


「人形でもいいんだろ」


言葉に詰まる彼の様子に、すぐにそう返した。
前に俺のことを好きだって言ってた時も、閉じ込めて鎖で繋いで、お姫様って言ってた。

……澪にはそうしている気配はない。

むしろ、今の方が断然人扱いしている。
比べるものでもないけど、誰がどう見たって……澪は『本当の愛され方』をされていると思う。

普通の夫婦を見たことがないからわからないけど、漫画や小説で見るのは確実に今見ている方だ。


「俺じゃなくても、ペットみたいなのがいれば…それで、」

「まーくんだからいいんだよ」

「っ、」


「それ以外はだめ」と当たり前のように続ける蒼に、…唇を噛む。


(……また、そうやって、)


喉を唸らせるほど蠱惑的な台詞は、どう考えても極上の見た目に反して中身は毒だ。

今の言葉は、違う。
蒼の単なる気まぐれだ。

何気ない些細な言葉に、いちいち惑わされそうになるな。

本気にするんじゃない。

揺さぶられるな。

……そう、思ってる のに、


「こっち向いて」


甘い囁きに、抗えない。
緩む腕の拘束に、ゆっくりと振り返れば彼の手が頬に触れる。

目が合う前に視線を逸らした。

こうして近くで見上げるたびに思い出す。

過去に自分が犯した償えない過ちを想起しながら、それとは別に無意識で熱くなる頬をどうか見られてませんようにと祈り、……それが不可能であることを知る。


「肌が白いから、すぐにわかる」

「……っ、るさい、」


簡単に、ばれた。
吐いた暴言さえも声に力がなかった。


「俺のこと、好き?」

「……っ、」


どうして、こうやって度々聞いてくるんだろう。
好きな人からの愛はもう手に入ってるんだから、言わせようとしないでほしい。


「昔は聞かなくても好きって言ってくれたのに」

「……、」


あの時と今では何もかもが違う。

……変わってしまった。
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