7
無言になってしまったらしい蒼とこの空間に居たたまれない。
恥ずかしい。死ぬ。
「う、…う、」なんでおれは今病人なのにこんな羞恥心に駆られて、熱が悪化して身体もいたくて友達の前なのに羞恥心でいっぱいになってるんだろう…。
…というか、蒼は真剣に身体を拭いてくれて、それに勃つっておれ…変態みたいだし、しかも一生懸命やってくれた蒼に申し訳なくて情けなくて穴があったら入りたい気分になる。
目頭が熱い。
「……ご、ごめ…っ、蒼…っ、おれ、だめで、…一生懸命にやって…っ、くれたのに…っ」
最早泣きかけて、ああもう情けない死にたいと枕を濡らす温かい涙が一度溢れたら止まらずに肌を伝って落ちる。
……やっぱり軽蔑しただろうか。
おれがこんなに看病してやってるのにこいつは勃起してたのか、と…蒼は思っただろうか。
「…うあ…」
何の反応も返ってこないから、余計に不安になって怖くなって辛くなって居たたまれなくて、本気で涙が零れる。ひっくひっくと、しゃくりあげながら顔を枕で隠して泣いた。
「……」
ぎしりと床が軋む音が聞こえた。
やっぱり、ため息をついて出て行っちゃうのかな。おれに呆れたかな。もうこんな変態と友達でいるのさえ嫌だと思ったかな。
もしも蒼に呆れられたら、もう友達でもいたくないと思われたら本気で死ぬ。次の日にはあいつは変態だみたいな目で見られて不登校になってひきこもるんだ。
恐怖がどんどんどんどん自分の中で拡大していって、最後まで想像したらもう死ぬしかなかった。
死因:友達に看病されて勃起したこと
情けない理由だけど、それほどおれにとっては一大事だったのだ。
「……可愛いな」
嗚咽を漏らしていると、何故かそんな言葉が聞こえて。
聞き間違えだろうと震える声で「……へ?」と聞き返してみれば、枕ごと抱きしめられた。
「…あおい?」
与えられる肌の温かさや包み込む香りに、息を呑んだ。
顔を枕から上げると、手首を掴まれた。
枕が布団に落ち、身体の上に跨るような体勢になっている蒼が、微笑む。
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