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まるで褒められているのかと錯覚してしまうような仕草で頭を撫でられた。
涙がぽろりと落ち、布団に染みを作る。
予想していた反応と全く違う。
え、えっとつまり蒼はどう思ってるんだと呆気にとられた。
(なんで、この状況で”かわいい”…?)
その単語の意味と、今起こっている状況が頭の中で繋がらない。
彼はその整った顔をいつも以上にふわりと緩ませて、「俺も勃った」と柔らかく目を細めた。
絶句した。
………もう、脳が状況についていけていなかった。
「……え?…勃った……?」
勃ったって、…その、…言葉の意味のままであってる…よな…?
(………なんでこの状況で蒼まで勃つんだろう)
だめだ。
熱で侵された脳はうまく働かない。
手の平が頬に優しく触れる。
「さっきからずっと思ってたけど、誘われてるのかと勘違いしそうになるような顔してるの自覚してる?」
「…え、」
一瞬反応が遅れたけど、「ちが、」どうしてそうなるんだ違うと声を上げようとすれば、綺麗な微笑みを浮かべる。
その瞳の奥に、明らかな欲情の色があった。
整った顔にうっとりとしたような表情を浮かべて俺を見る蒼に目を瞬いて、唾を飲みこむ。
「だって、」
「…っ、」
「涙目になって汗ばんでていつもより色っぽくてただでさえやばいのに、勃起したとか言って泣いちゃうし、拭いてるときも声をおさえて羞恥心に苛まれながらそれでも気を遣ってくれるから、どうしようかと思ったよ」
「…あ、あおい…?」
いきなり興奮したような表情で言葉を並べ立てる蒼に驚いて後ずさる。
でも、布団の中では動ける範囲なんて限られていてほとんど離れられてなかった。
…そんな俺に対して、彼は言葉をとめない。
「わざと同じ場所を拭いたりして、その度にまーくんが俺を誘うような声を出してくるからまずいなって思ってたのに、気づかずにむしろ俺に対して罪悪感で泣きながら謝ってくるし、枕抱きしめながら泣きじゃくるってどうなってんの」
「え、…ちょ、…っ」
「なんでそんなに可愛いの。俺を悶え死にさせたいのって責めたくなるくらいまーくんが可愛すぎてどうにかなりそう」
何を言ってるんだ。
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