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……いやだ。いやだ。


(まだ、だいじょうぶ…)


いやだ、いやだいやだ 
        いやだいやだいやだ――――、


(…だいじょうぶ、なはず、なのに……おれ、は…)


生きていたくない。
こんな、辛いだけの生活なんて。

与えられる幸福より痛みを地獄のように刻み付けられる生活なんて。

俺より、澪を一番に求める蒼なんて、……見たくない。

こんな毎日、耐えられない。

好きな人が自分以外の誰かと想い合う姿を、……一生手の届かない場所にいってしまうのを、傍で眺めていたくない。

澪の前でだけ見せる蒼の表情に、独占欲が身体中から込み上がり、尋常じゃないほど胸が苦しくなる。

息が、できない。
できない。

息が、酸素が足りない、酸素が、ない。


「……っ、苦しい、…」


見上げる。
甘えるように彼の愛称を呼んだ俺の声に、彼は優しく目を細めた。

本来、縋ってはいけない相手。
こうして、邪な感情を向けることも、二人きりで誘うように服を掴んでもいけない人。

恋人ならまだしも、……結婚を決めるほど最愛の女性がいる男と、猶更こんな関係を続けてはいけない。

それぐらいの常識は持っている。

わかっている。
わかっている、けど

……せめて、それまであと少しだけ。

部屋の中でなら、
他の誰にも見られない場所なら、少しくらいの同情心を強請ってもいいんじゃないかと、弱い心が侵食してくる。

だって、苦しいんだ。
離れてる間、ずっと苦しい。

泣きそうになって、……何をしても止められない感情に胸を庇うように押さえ、……たすけて、と懇願する。

「どうしてほしい?」と囁かれ、…躊躇いがちに言葉にした。

と、それが合図のように、伏せられる瞼。

重なる唇の感触に緊張し、僅かに身を引く。
差し込まれた舌と口づけが深くなる度に感じる熱い吐息が心臓を狂わせて、痛くて……涙が溢れるほど嬉しくて、このまま永遠に時が止まったらいいのにと願った。

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