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びく、びくん、と畳の上に横たわって、そろそろおさまってもいいはずの絶頂の感覚に耐える。

(……高校ぐらいの男の性欲は一番強い、って聞いたことあるけど、……)

それを考慮しても、きつい。つらすぎる。
一日中、蒼がいる時には特に堪えられなくなる性欲のひどさは加速するだけで一向に止まらない。


「………おく……に、……もっ……、」


欲しいのに、と、喘ぎすぎて痛めた喉から零れた言葉は掠れている。

蒼にも、ずっといれられてない。
お互いの性器を扱き、胸の先端を、指で届く範囲の肚の中の粘膜や前立腺をグチャグチャされるだけ。

このままだと、俺が逆に襲ってしまいそうなぐらい、理性が飛びかけることがある。


「………ぃ、た…っ、」


蒼と澪の情事を思い出し、……胸をおさえて、涙を零している瞼を持ち上げる。

蒼の、凄艶なほど色気を滲ませた『男』を前面に出して感じている表情。
行為に慣れているように、相手をどうしたら悦ばせられるかを知っている厭らしい腰の動かし方。
この世の誰よりも、比べることができないほどエロく、乱れた息遣いと美しい身体。

苦しい、息が、うまくできない、と浅く呼吸をしながらも、またきゅうううっと下腹部が疼き始める。

行為中の彼を思い出しては欲情し、頬が熱を持ち、手が動く。
背を反らし、身を焦がし、気絶するまで腰を振り、絶頂し続けた。


………

…………………


髪に何かが触れている。
頭を撫でられているような心地よさに、瞼を持ち上げた。


「……、……」


……愛おしくて、ずっと求めていた蒼の姿に、思わず目頭が潤む。
感情も相まって、……こうして、見るたびに息を呑む。

神様に特別に愛されているとしか思えないほど美しく冷たい容姿は、何度目に映しても…どうしようもないぐらいに心を奪われてしまう。

すぐに彼の首に腕を回し、身体を自分のほうへ引き寄せた。
その行動で軽く体勢を崩した蒼の身体がどこかにぶつかったのか、近い場所で金属のような高い音が何かとぶつかる音が聞こえた気がした。

けど、そんな些細な出来事に意識が向くのはほんの一瞬だけだった。
そっちに視線をやる前に手で目を覆われる。

まるで、そこに見られてはいけない何かがあるみたいに。

そがれた思考は瞬きをする間もなく、元に戻る。

唇を押し付け、くちゅ、ぬちゅ、とたどたどしく舌を使って誘う。
既に自分の口は溢れる涎をだらしなく垂らし、待ち望んでいた身体を求めることしか頭にない。
少しでも長く触れたくて、少しでも俺とする方が気持ちいいと思ってほしくて、吐息を重ねた。

言葉なんて必要ない。
それよりも、今すぐに欲しかった。
この疼いて仕方がない、…唯一それを満たしてくれる相手が、目の前にいる。
理性なんて、働くはずもなかった。

ほんの僅かに驚いたような反応をした蒼は、拒む様子もなく応えてくれる。

情欲を掻き立てる上品で大人な甘い香り。味。感触。
息遣いの合間に見える彼の顔にゾクゾクし、心を奪われる。
目をとろりとさせ、舌が溶けるほど濃く、甘く絡みあうようにして熱心に口づけを交わした。
もっといやらしくなる官能的なキスに、きゅ――って下腹部から骨盤が痺れる。

息継ぎの合間に黙って伸ばした手で蒼が俺の髪を撫で、頭を引き寄せられた。
二人の間で外気にさらされ、勃起している俺の性器は彼の手によって弄られながらビクビク震えている。
涎の量以上に先走りと精液を零し、きゅううとなる下腹部に従って歓喜の蜜を垂れ流して痙攣した。


「……はぁ、…ぁ゛…っ、ぐ…っ、ん……ふ…っ、…んん、」

「……っ、……は……」


微かに乱れる彼の息遣いに嬉しくなって、頬が熱を上げる。

飢えた動物みたいに涎を零して舌を差し出しながら、腰をくねらして相手の身体に裏筋を擦りつける。
渇望しているように尻の穴がくぱくぱきゅうきゅうして、下腹部が切なげに疼いている。


「………き、……好き、…っ、」

「……うん」


変わらず思いは通じ合えないけど、受け入れてくれる蒼があまりにも愛おしくて、…あまりにも残酷で、また胸が締め付けられた。


――――――――――――

この絶叫にも似た悲鳴を上げる心を全部捨てることができるなら、きっと楽になれるのに。

(………、痛い)

声を上げて、泣きたい。
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