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自分の都合の良いように何でも言うことを聞かせられそうな感じが


(………まずい、)


まずすぎる。
これは人間としてまずい思考だと、自分の内面の変化に尻込みしたくなる。

ガキの頃(今となっては反省もしているが)好きな女子に構ってもらおうといじめていた時の感情を彷彿とさせられた。…だが、そんなもの今の感覚には到底及ばない。

彼が高校生ぐらいだろうことはなんとなく背格好でわかる。

……しかしそのせいでますますというか、…少年の、見た目が良いのに自信無げに怖がるような、実際の年齢とは不釣り合いに何も知らなそうに純粋な感じが、その衝動に拍車をかけている。


唸るように呻いた。


――――蒼様に感じるものとは違う。


欲しいと見た人間に切望させるような感覚を抱かせながらも、同時に年端もいかない少年に手を出すような危うさを思わされて感情がごちゃごちゃになる。

本来なら手を出してはいけない尊い清らかな存在だけど手に届いてしまう矛盾のような。

手に届きそうな、触れてもよさそうな雰囲気を醸し出しながらも、決して容易に触れてはいけないもののような。

けど、手にいれたい、とも強く思わされる。


「…っ、ぅ゛、ぇ、……お゛、…れ…っ、」


同時にその尋常じゃない泣き方に、守ってあげなければと思う気持ちも芽生えていて、わけがわからなかった。

少年が何を思ったのか、僕の方に手を伸ばす。

魅入られたように欲望のままにその手を取ろうと、一歩前に進んだ。


………
…………………


「っ、…ぅ…、」


気づいた時には少年が下にいた。
不安定な心情を隠さない、涙で潤んだ伏せがちな目。
顔を背けた少年の前髪がはらりと重力で床の方に垂れるのが見えた。

……自分の下で、床に倒れされた少年の身体に僕の影が重なっていることが現実感をひしひしと与えてくる。


(……僕は、ここにきてから頭がおかしくなったのかもしれない)


男。
少年とは言っても男だ。
恋愛対象でもなければ性の対象でもない。

ありえない。
生物学的にも、生殖本能的にもこういう感情が存在していいはずがない。

弟よりも何歳か年下の子だ。
そんな子に何を考えている。

10以上年が離れている少年に、僕は何を


「……っ、すみません…!!」


声を、張り上げる。
このままでは何か犯罪に似たことををしでかしてしまう。

そんな気がして、身を起こす。
振り返らずに、走って逃げた。

(……彼は、危険だ)

蒼様よりもある意味危ないと、全身が警告していた。

風呂のことは、とっくに頭から抜けていた。

どこをどうして来たかは定かではない。
部屋に戻った時には勃起しきっていた男根を慰めるしかなく、その日を終えた。
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