5

「ねつ…?」


そっか。熱があったから、こんなに変な感じなんだ。
ふわふわとする思考でぼーっとしていると、額に新しい冷えピタをくっつけてくれる。


「…あり、がと…」

「びっくりした。部屋に戻ったら倒れてるから、心臓止まるかと思った」


優しくほっと安堵したように微笑みながら、そう言って頬に触れてくる。
その冷たい手を心地よいと感じて、目を閉じるとふっと記憶が蘇ってきた。


夢。

頭痛。

手足の鎖。

扉の隙間からのぞく光。

瞼を伏せている横顔。

零れる唾液。

キス。



「………………」

「なに?やっぱり気分悪い?」


無意識のうちにじっと彼の唇に視線を向けていたらしい。
のぞき込んでくる蒼に、慌てて首を横にふる。
一瞬ずきりと頭が痛くなって、ぐらりと視界が歪んだ。


「…っと、ほら、ちゃんと寝ないと」


肩を支えてもらって、ベッドの中に戻される。
思考が鈍い。


「何か食べる?」

「……うん」


ぼーっと天井を見上げて頷く俺に、布団をかけなおして蒼は立ち上がった。
prev next


[back][TOP]栞を挟む