灰に埋れたルビー
「今日、花火上がってたんですねぇ。」
「そうじゃのう。」
遠くの方で、バン、バンと大輪の花を咲かせる夏の花火を、おなじみの屋根に登り、ポッキーを加えながらぼんやりと見つめていた。
織姫、茶渡、一護の、それぞれの修行を終えた私と喜助さんは、もう一つの大きな仕事に取りかかった。
霊子変換器付き穿界門。
それが今回、霊力を持っていない子達を尸魂界に送るのに、必要な道具だ。そしてそれを、ここ浦原商店地下の勉強部屋に7日間で作る。
それが、私に残された仕事だ。
修行が終わったその日に勉強部屋にこもり、日々作業すること約一週間。
まるで遠い昔に戻ったような気持ちになりながらも、穿界門を作り上げた喜助さんに霊子変換器を手渡した。
それを取り込み、約10m弱の、穿界門が完成したのが、今から約2時間前。
「のぅ、常盤」
「なんです?」
「お主は、尸魂界には行かぬのか?」
「…え?」
「尸魂界には、あやつがおるからのぉ。」
「……夜一さん…。」
言わないでくれ。そんな短い言葉さえも出なかった。
「猶予はあと5時間じゃぞ。
強要するつもりはないが、ルキア救出には、お主の力が必要じゃ。」
そう言って夜一さんは行ってしまった。
そんなこと言われたら、いかない。なんて言えないじゃないか。
きっと、それさえ見抜いていたんだろうなぁ。
ー8月8日 午前0時ー。
「常盤サン、決心は付きましたか。」
今でお茶を飲んでいた私に、浦原さんはそう問う。
そして義骸を脱ぎ、死覇装を身にまとった私に、厳しい目つきの喜助さんが、背後に立っていた。
「夜一さんが行かれるというのなら、お供するだけです。」
「そっスか。
まっ、頑張って下さいよ。」
「嫌みですか?喜助さん」
「まさか。
エール、ですよ。」
ぱっと扇子を開いた喜助さんは、はっはっはっと笑った。
扇子と帽子の間から見せた視線に、私は小さく頷いた。
8月8日 25時、5分前ー。
すべての準備が整った私は、浦原商店の屋根に立っていた。
「喜助さーん。
投げますよー!」
「はいー。お願いします。」
道路でヒラヒラと手を振っている喜助さんをみた後、東西南北、ある3つの方向に喜助さんから託されたある物を思いっきり投げた。
白い物体が、各家々めがけて飛んでいく。
うしっ。
一仕事を終えた私は、喜助さんが店の前で待つと言ったため、一足先に勉強部屋に下った。
これを抜ければ、また、尸魂界だ。
あいつがいる場所。
父と母が眠っている場所…。
そうだ、そう思っていけばいい。父と母が眠る場所だと思っていけばいい。
今渋れば、それこそ命取りになるのだから。大丈夫、尸魂界は広い。
霊圧だって隠せるよう細工はした。
不覚はない。
「常盤サン。」
「来たようですね。」
ガヤガヤとやってきた黒崎たちの気配はを感じ、浦原商店の前で集まっている生徒たちの前「姿を見せる。
「やぁ、諸君よく集まったね。」
そう陽気に現れた死覇装姿の私を見て驚いているようだ。
「誰だ。」
「死神…誰だてめぇ。」とかなんとか、まったく失礼なことが聞こえてくる。
声は、石田と黒崎のみ。
織姫と茶渡は知っているからね、私を。
ごちゃごちゃうるさい奴らを黙らせるため、一つため息をつく。
「こんばんは、生徒諸君。」
「ど、どちらさまですか?」
「…はぁ?
いや、誰だよ!」
「常盤先生!」
「え、あなたは常盤先生?
…え、まさか、本当に嵩宮先生?」
「こんばんは。」
目を丸くして、眼鏡のブリッヂを押し上げた石田、にらみを利かせて私を見つめる黒崎に、ニコリと微笑んだ。
「全っ然顔ちげーじゃねーか!」
「はいうるさい、黒崎!」
その言葉に、彼は目を丸くする。
「まだ、信用で来ないか…じゃあ、中間考査の科学の点数でも読み上げるか?」
「まて!まってくれ!信じる、信じるから!」
一人焦る黒崎に笑い、パンと手を打つ。
「さて、そろそろ時間ですよ、中にどうぞ。」
そう言って、生徒たちを引き連れ恒例の勉強部屋まで誘導していく。