狭間
入った瞬間から迫り来る壁。それから逃げる私たち。
走る、走る、走る
とりあえず、走った。
いや、今は走るしかないのだ。
それをみて、相変わらずごちゃごちゃ話す黒崎たちの会話を聞きながら、それを制する夜一さんにクスクス笑う。
なんだか楽しそうだなぁ。
言い争いをしつつも、仲の良さが伝わってくる。
多分、好きなんだろうなぁ。お互いがお互いに。
そして、ようやく見えた光に、少し希望を感じた頃だった。
石田のマントが飲まれて、茶渡が石田を背負う。そんな姿を横目に、ニヤリと口元を緩める。
なんだ、初っぱなからいろいろ起こるなぁ。
「お、おい!
なんか来るぞ!」
今までとは違う、焦った石田の声に振り返れば、茶渡の背後に迫る…あれは。
えぇぇ!こ、拘突!?何で!マジか!
さすがに目が飛び出るかと思ったわ。
んもう、何でこういう時に!ついてねーよ。誰だ、不幸を持ってきた死神わ!……あー、うん、私か死神は。
「急げ!時期出口じゃ!」
夜一さんの声に力に強く地を蹴った。
そして、いつの間にか織姫が隣から消えた。
え…え?…。
そう思った瞬間。
突然の閃光に包まれた私たちは、いきなり巻き起こった閃光に飲まれるかのように、そのまま光の先に引きとばされた。
ぴょーんと、洞窟から投げ出された私たちは、それはそれは美しくまるで体操選手のように飛んでいく。
まぁ、隣ではぎぃゃぁぁぁ。と叫んでいる。
まったくだっせーな、黒崎。
助けねーけどな。
そう思っているうちに、勢いは止み、飛んでいると言うよりは落ちていて、数秒後には地面に着地していた。
ゴロゴロとものすごい勢いで転がる黒崎たちを確認しながら、パンパンと土を落としながら、立ち上がった。
それから、一人点呼を取る。
3人いることを確認し、ふと辺りを見渡すと、そこは現世からすればとても古い町並みが目を入った。
木造の古びた家々が並んで、寂れた街のようにも見えた。
舗装された道路も、コンクリートビルも、電柱さえもない。屋根だって瓦で出来ているものすらない。ほとんど木だ。
これが、流魂街。
はぁ。ようやく尸魂界か。まだ、ここかあ…。
地獄蝶を使わないと、こんなに大変だとは知らなかった。
でもまさか、またこっちに来ることになろうとは思いもしなかった。
土煙の中から、ようやく見えてきた、見慣れた瀞霊廷。
街並みは全くと言っていいほど、変わってはいないように見えた。
相変わらず、見ているだけでイライラしてくるなぁ。
「時常盤、大丈夫か。」
「えぇ。」
夜一さんの隣に並び、腰に手を当てながら、ぼんやりと瀞霊廷を見つめる。
近づけば壁が振ってくる。その上、瀞霊廷は結界の中にある。
さて、どうしたものか。
それから、指先と指先をあわせてぐっぐっと押しながら、悶々と考えていると、視界になぜか黒崎を捉え、いつの間にか彼は瀞霊廷の方に走り出していた。
ん?
……え、あ、えぇ?。
一瞬何がなんだか理解できなくて、一言何かを言う前に、夜一さんの怒号が飛ぶ。
「ばっ、馬鹿者。迂闊にそちらに近づくな!死ぬぞ!」
しかしそれはすでにもう、後の祭り。
ドドドド。と天から落ちてきた壁。ぎりぎりとところで、黒崎がつぶれることは免れたが、それを見て、瀞霊廷に入るのが絶望的に見えた。
壁が落ちてきたとなれば、門番も共にきたであろうな。
何も知らない人間の暴走に、再び深くため息を付いた。
「ねぇ、夜一さん。」
「なんじゃ。」
「黒崎がアレに勝ったら。
瀞霊廷に入れたら、別行動させてもらっても、いいですか?」
「…別行動、じゃと?」
「はい。
白道門を抜けれたら…ですが。」
「…時和」
「ちょっとやっておきたいことがあるので。」
「…墓参り、か?」
夜一さんの言葉に驚いて視線を下げれば、何食わぬ顔で尻尾をくるんと回した。
「先ほどから、匂っておるわ。」と呆れたような夜一さんの言葉に、あはは。と笑った。
「…猫でしたね、今。」
「ったく、お主というやつは。」
そう言って、彼女ははぁ。と深いため息を付いた。
「気をつけるんじゃぞ!」
そんな夜一さんの声が先か、丹坊の泣き叫ぶ声が先か。
私は、どちらにせよ斬魄刀を握りしめ、白道門に向かって走り出した。