白道門を突破せよ
私たちの制止も聞かずいつの間にか戦いが始まり、そして壁の中で終わった戦いは、どうやら黒崎の勝利で終結したらしい。
負けたはずなのに、なぜか黒崎を気に入ったらしいジ丹坊は、自身で白道門に手をかけた。
え、なんで?と驚いているうちに、ぐぐぐっと鈍い音を立てながら、ゆっくりと開いていく門。そして、見え始めた瀞霊廷。
そこに少しだけ、希望のようにも思えたのに、門が開き私たちの目の前に現れたのは、誰も予想が付かなかった人物だった。
それは、まるで地獄の始まりのようにも思えた。
長い前髪と銀色の髪。にっこりと不気味にも思える、緩めた口元。
相変わらず何も変わってはいないようだ。
そんな彼をみて、私は驚きを隠せなかった。彼も私を見て、かっと目を見開き、数秒時間が止まったような感覚に落ちいる。
まさか、いきなり出会うとは思いもしなかったわ。
「…久しぶりやなぁ常盤。
死んだんやなかったん?」
「…誰も、…死んだとは言ってないけど?」
ニヤリと不気味に笑うギンに、こちらも負けじと、口角を上げて首を傾げた。ピリピリとした緊迫した空気が包む中、門を完璧に開いた張本人である丹坊は、ギンを見付けた瞬間ガタガタと震えだした。
切れ長の目で、ジ丹坊を睨んだギンは鰐口をきる。
隣で黒崎がギンの斬魄刀をバカにするように挑発するが、気に求めること無くギンはジ丹坊を睨んでいた。
「あぁ、こらあかん」
ギンがため息交じりに言葉を発した瞬間、じ丹坊の左腕が勢いよく吹っ飛んだ。
「な!?」
思わず悲鳴をあげる井上と石田。
相変わらず、薄ら笑いを浮かべたギンに、冷や汗をかいた。笑顔を浮かべたままで、人を傷つける彼に恐怖を覚えた。
切断された箇所からは、勢い良く血が噴きだしているのに、なおも片腕で大きな白道門を支えているジ丹坊。
それに気付いたギンは、じわじわと口元を緩めて行く。
「おーーー!
サスガ尸魂界一の豪傑。
…けどあかんなぁ…門番は門開けるためにいてんのとちゃうやろ。」
ギンを睨んではいるが、敵わないと分かっているのだろう、彼がギンに手出すをするとはない。
そして、夜一さんでさえも黒崎を押さえつけながら、最悪な筋書きを回避できる策ないものかと、考えているようだ。
ズンと地震のような揺れと共に、門が丹坊の右手と体にのし掛かる。
その背中を眺め、そして目を細めた。
「おらは負けたんだ。
負けた門番が、門を開けるとは当たり前のことだべ。」
彼が話す間にも、じわりじわりとギンが歩み寄っていく。
「何言うてんねや?
負けた門番は門なんか開けへんよ。
門番が負ける言うんは、死ぬ意味やぞ。」
そうギンが霊圧を解放した瞬間、視界の端にいたオレンジ色が動いた。斬魄刀を抜いてギンに切りかかった。
ガキン。と刃先がぶつかる音が響き、そして両者が跳ね返され間合いを取る。
「一護!」
やけに夜一さんの声が鮮明に聞こえた。
その声にはっとした。
そして、それと同時に、ギンが動きを止めた。
何か考えているようにじっと一護を見つめ、彼がギンに背を向けても、切りかかることはしなった。
しかし、それから一瞬ギンの笑顔が見えた。昔見たことがある。
あの、困った笑み。
あぁ、アンタはまた何かを背負い込んだんだね。
そのあと、始解したギンの斬魄刀に、ジ丹坊と黒崎もろとも吹き飛ばされ、無惨にもギンの笑顔と共に、瀞霊廷への道は閉ざされたのだった。