正義という名を借りて

吹き飛んだ黒崎達にみんなが駆け寄って行く中、ひらひらと手を振り、門の向こうに消えたギンの残像を見つめていた。


それから織姫がジ丹坊の切れた腕の治療を申し出ると、現世で特訓した方法で丹坊の腕を修復し、街の中に入った私たちはガヤガヤと賑わう通りを歩きながら、今夜は、この街の長の家にお世話になることになった。


それぞれが時間を潰して集まってきた頃には、もう大分日が落ちあたりは暗闇とかしていた。


「常盤」
「はい。」


ホッとろうそくのゆらゆらと照らす灯りの中、夜一さんはその金色の瞳を光らせ私を見た。


「明日、志波空鶴を訪ねる。」
「志波…そうですか。
では、あれを使って。」
「あぁ、そうじゃ。」


わなわなと黒崎たちが集まると、夜一さんは明日のことを黒崎たちに話し出した。


「なんだってぇ。
門を突破するのは諦めるのか。」


ズズッとお茶を啜りながら、黒崎と夜一さんの会話に耳を傾ける。


「諦めるのではない。一度門を開けてしまった以上、内側の警備はこれまで以上に厳しくなっているはずじゃ。
となると同じ手を使うのは得策ではない。」
「同感ですね。」
「ほかの門は、どうだろう。」
「それとてここと大差はなかろう。」


パチパチといろりの火が音を立てて、それぞれの顔を照らしている。

みんなが難しい顔をし、無言になる中、夜一さんが目を細めて、長老に志波空鶴の所在を聞いた。


後、長老の明らかな同様にかぶさるように、入り口の扉を吹き飛ばし、何者かが家の中に飛び込んで来た。


さっきから何かが近づいてきているのは気がついていたが、まさか飛び込んでくるとは。



「よお、久しぶりだな、おっちゃん!」
「岩鷲、何しに来た!」



その奇抜な服装をしたイノシシに乗ってきたであろう男は、黒崎を見た瞬間、目の色を変えつかみかかった。



そのおかげで、気の短い黒崎は簡単に乗せられ、下らない喧嘩が幕を開けた。


その光景を見ながら慌てる石田に、長老と共にズズッとお茶を啜った。


「長老殿。
このお茶は、美味しいですね。」
「うむ、そうじゃろう。」
「では今度、このお茶に合う菓子を持ってきます。」
「おぉ、それは嬉しいことじゃ。」
「お茶啜ってる場合じゃなくて、何なんですか、あいつは!」



ギャンギャン、ギャーギャー騒ぐ近所迷惑の喧嘩を眺めながら、石田の焦った言葉に耳を貸すことなくお茶を啜り続けた。




そのあと、なにやら喧嘩の根元が自己紹介をし出し、大声を出して叫んだと思ったら、黒崎諸共外に飛び出していった。



やれやれ。若い奴は血の気が多くて気が短い。
まったく昔の誰かさんを見ているようだ。




石田たちもそれを追って外に出ていってすぐ、はぁ、とため息をつくと湯飲みを床に置き、向きを変えて長老殿を見た。


それから外がうるさくなるに連れて、ようやく長老殿が重い腰を上げ、喧嘩の仲裁にはいる。


が、止まるはずもなくそのはうるさくなる一方。


茶渡が中に戻ってきたと思えば、黒崎の斬魄刀をつかみ再び外に向かって走り出し、入り口で斬魄刀を投げた。

とうとう斬り合いまで始まったらしい。


はぁ。とため息をつき静かになった室内を見渡していると、外から、今までとは違うけたたましいほどの金属音が鳴り響いた。


何かよく分からぬ間に、喧嘩は収まり岩鷲やその弟子達は猪に乗って去って行ったらしい。
まったく嵐のような出来事だ。


翌日、朝日が昇り始めた頃。



一行は長老に教えてもらった西流魂街のはずれに向かった。
そう、志波空鶴の家へ。



そこは、草原の、何もない閑散とした土地にあった。村のはずれに。何もない場所にあるからこそ、あの旗が目立つ。
相変わらずの変な外見にげんなりしながら、かなり引いている石田と黒崎の気持ちがよく分かる。


相変わらずだ、このセンス。あの人は人外な独創性を持ち合わせているのだ。

夜一さんは、旗持ちオブジェを褒めているが、私には到底理解できない。範囲外だ。
どこか疲れたような石田の背中を眺めながら後に続いた。


家に近づくと、旗持ちオブジェの“手”の上から、声とともに、黄色と白の服を来た男が2人振ってきた。


その男たちに、黒崎が斬魄刀の柄に触った。


しかし、追い払おうとした黒崎の足元にいた夜一さんに気付いた2人は、急に態度を変えた。



「夜一殿ー!?そっ、そ、そちらにいらっしゃるのは、常盤殿では?」
「どうも、ご無沙汰しています。」


そう言って微笑めば、飛んできた巨体にひしっと手を掴まれる。目の前の大男たちは、よくぞ生きておられたと涙を流している、
それはもう、ドン引きするくらいに。


泣き止んだ二人に連れられ、家の中に通され私たちはある障子戸の前で止まった。


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