技術開発局の鬼
瀞霊廷に侵入して、数日。
侵入以来、未だにみんなとは会えていないが、各霊圧はずっと感じている。
一番頼りない空鶴さんの弟も、まぁかろうじて生きているようだ。
テキトーに死覇装を奪った私は、適当な隊の一番後ろをついて走り、隙を見て脇にそれる。
それを幾度か繰り返し、辿り着いたのは古巣十二番隊隊舎。そして目指してきたのは、技術開発局。
最後にくっついてきた隊から抜け、門の前で立ち止まり、一息つく。
そして、見上げた門はとても懐かしい。
外見は昔と少しは変わったようだが、面影を残すそれは、昔を思い出すには十分すぎるものだ。
さてと、どうやって入ろうか。この中はそんじょそこらの隊舎とは訳が違う。
侵入するには、だいぶ神経を使うだろうし。
監視カメラも罠も、たちが悪い上に、精巧にできている。
まぁ、それはそれでうれしい気もするが。
隊長があの涅だ。意地の悪い物ばかりだろうが、まぁそこはどうにかして入るのが私だ。
技術開発局とでかでかと書かれた門の前に、仁王立ちしていると、「あの、何か?」そんな声に振り向いた。
そこにいたのは、死覇装に白衣を身にまとい、いくつかの紙を胸に抱え込んだ死神。
前髪を一つに結って、ぽかんとした顔で私を見ていた。
「十二番隊の方ですか?」
「は、はい。」
「阿近三席に言伝を頼まれてきました。お会いできますか?」
「阿近さんに…。
わ、分かりました。
僕が案内します。」
「お願いします。」
強く頷いたときに、ぴょんと前髪がはねた。
久しぶりに呼んだ、生意気で幼かった少年の名前。
前を歩く子は、私が、いたときにはいなかったから、十二番隊の新入隊員だろうか。
こんな、ところに入るなんて、この子も物好きだなぁ全く。さすが奇人変人の巣。まぁ、創設者があの人じゃ、当たり前なのかも知れないな。
そんな懐かしい思い出に浸りながら、チラチラと隊舎内を観察する。
建物は増えたし、何がどこにあるかは分からない。
建物自体も変わった。30年は、意外にも長かったのかもしれない。
彼の背中を眺めつつ、すっと横にそれて、建物の影に身を隠した。
「阿近さん!
お客様をお連れしました。」
「あ?客?
…誰もいねえじゃねぇか。」
あぁ、危ない、危ない。
懐かしい声に、そっと覗けば、昔とはだいぶ変わった彼の姿があった。
阿近の言葉に、あれ?あれ?と首を傾げている彼に、ありがとうとつぶやくと、私は再び歩き出した。
阿近の姿は見れた、うまくやってるようで本当によかった。
あと、私がやるべきことは、この技術開発局を機能停止にすること。
もちろん技局を破壊するのではない。
この瀞霊廷内にしかれた監視の目を主電源から落とすこと。
技局内でも混乱してもらおうかな。
そうすれば、彼らもきっと動きやすいだろう。
さて。
涅のことだ。
電源は、区域によって別にされているかも知れない。
いや、されているだろう。
それに、どこにつけたかさえも分からなくしてある。
今私がここにいることも、もしかしたら監視されているかも知れない。
さて、どうしたものか。
困った。と思いながらも、うずく気持ちに我慢ができなくなり始めていた。
どうせやるならめちゃめちゃにしたい。
監視カメラを機能停止にしてやろうか。ハッキングでもして、一つずつ画像を遮断してやろうか。
ふふん。どれにせよ、面白い。
ここが混乱すれば、少なくもの今でよりは瀞霊廷内が動きやすくなるはずだ
電源と本体を見つけたら一気に決めよう。
全てが終わるまで、再開できないくらいに。気持ち的には、機会を壊すことはちょっと複雑だが、まぁいいだろう。
だから、無事でいてくれ。