技術開発局襲撃
ようやく見つけた電源部は、30年と変わらない場所にあった。
地下へと伸びる階段を降り、奥の扉を開けるとそこはまさに中枢といったところか。大きな鉄の箱がいくつも並ぶ中に見つけた人極目立つ装置。
「うわ、勘が冴えすぎてて怖いわ。」
そう呟き扉を開けると、案の定電源基板とも言える配線が出てきた。先ほど失敬してきた配線図と照らし合わせれ、回路を理解すればこっちのもんだ。
一つずつバグを装って配線を組み替えていく。
まだ気が付いてはいないだろう。それにまだモニターは正常なはずだ。私の開発した擬画像投影装置を持ってすれば、らこんなこと朝飯前だ。
薄暗い建物の裏の下り階段を下りた場所にあるそこは、滅多に人が来ることもなく、仕事をするには大分いいところだ。
カチカチと回線をバラバラにつなげ、全てつなげ終わると一気に画面を切り替えた。
完璧、さすが私。
ふぅ。と汗を拭うフリをして道具を片付けると、静かに立ち上がる。
あとは夜一さんと合流できれば。
うまくいきすぎたことに怖くなりながら、地下室の階段を上っていく。しかし、どうやらそう簡単には返してくれないらしい。
外で待ちかまえているのだろう、霊圧がいくつも感じられる。
まったく。破壊には反対だけど、私はまだ死にたくはないしね。
しぶしぶ斬魄刀を鞘から引き抜き、左手に構えると顔を隠す面を取り出しはめると、そのまま勢い任せに地下から飛び出した。
キン。と高い悲鳴のような音が響き、ぐっと圧される。が、その数本の斬魄刀を弾き返し、数回跳び、間合いを取った。
「観念しろ!侵入者!」
ふと気が付けば、どうやら私の周りは、死神だらけ。死神、死神、死神。
斬魄刀を構えて、怖い顔で私を睨みつけていた。
四面楚歌。
はぁ。穏便にいこうよ。
いくつもの斬魄刀。これが刺さったら、蜂の巣みたいになっちゃうな。
そうぼんやりと考えていると、明らかに別の雑魚とは違った霊圧を感じた。
隊員の話では今、涅は隊首会に出向いているはず。それにそれぞれ、隊の指示を出すため技局にはいないだろうから。
さて、だれだろう。半ば好奇心に任せて、ゆっくりと振り返った。
「どけ!
てめぇら、何をしている!」
「あ、阿近さん。」
「何があった!」
「侵入者です!」
「あ?隊長がいない時に、クソが。」
「阿近、お前こそどうしたんだ」
「電源系統がやられて、誰かが監視カメラのモニターが滅茶苦茶にしやがった。」
「んだと!?」
「えぇ!?」
おぉ、成功したみたいだ。さすが私。
そう言ったのは、阿近、ではなく一緒につい付きたであろう、最初に案内してくれた子だ。
遠くからそんな会話が聞こえてきて、目を丸くした。今阿近に会うのは不味いぞ。
私を知っているやつなんて、みんな席官で出払っているだろうと、たかをくくっていたが、ここに来て阿近にバレたら、もろとも水の泡。
逃げなければ。
声が近づいてくるにつれて、隊員が次第に左右に分かれていく。モーゼか!って、そんなことを言っている場合ではない!
斬魄刀を鞘に収め、チラチラとあたりを観察し、明らかにびくついている奴を見つけた。囲んでいる隊員の中でもひときわ霊圧が低い。ねらうのはあそこだ。
そう分かった瞬間、瞬歩でそいつに近づくと腹を打って気絶され、落ちる体を利用して、肩に足をかけると、背中を蹴って塀に飛び移る。
ちらりと肩越しに後ろを見れば、阿近が人混みをかき分けてきたところだった。
あっぶな。
ちらっとみた彼の姿は、あまり変わってはいなかった、が、強いて言うなら身長が伸びた、かな。ツノあるし。
ニヤリと彼に笑みを向け、塀の向こう側に飛び降りた。
▼side he
理解できなかった。
監視カメラの映像が、全て滅茶苦茶になり、別の場所の物が映し出されている。
明らかにシステムの異常。今までこんな事態はなかったし、ついさっきまで正常だった。
何なんだ。
おかしい。
何かがおかしいんだ。
焦る研究員の姿と画面に映し出されている映像を見つめ、ぐっと拳を握りしめた。
先ほどの旅禍の侵入で、隊長と副隊長が外に出ているところを狙ったのか。
致し方ない。
「リン!」
「は、はい!」
「ついてこい!
地下室に行くぞ。」
「は、はい。」
一番下っ端の新入隊員をつれて、俺は研究棟を後にした。
それから、目にしたのは隊員が集まっていた…あそこは地下室の入り口。
まさに、今行こうとしている場所だ。
くそっ、あそこにいるのか!
なぜわかったんだ、と悔やむ一方であの回線を的確につなげた奴の顔を見てみたいという気持ちもあった。
そう思うと、歩いていられなくなって、走り出していた。しかし、その人山に次第に近づくにつれて微かに感じる霊圧に、再び頭が混乱した。
何、で…
ようやく隊員をかき分けで出たとき、目の前にすでに誰もいなかった。
「阿近三席!」
「何事だ!」
「し、侵入者です!」
「ちっ」
そう指先を追って屋根を見上げれば、その瞬間見間違えにさえ思えた、現実。
屋根に立つ後ろ姿に、自身の目を疑った。
死覇装に鍔のない銀白の斬魄刀。それは見るものが見れば、誰のものか分かってしまう言わば確証。
微かに振り返った表情は、面と太陽のせいで霞んでいたが、この霊圧だけは間違えるはずはなかった。
懐かしささえ感じた。
かすかに見えた口元は、ニヤリと笑っていた。
「あ、あの阿近三席?」
「……あぁ。」
まさか。
見間違い?いやそんなはずはねぇ。
だけど、あの人は…
死んだんだ。