数え切れないほどの嘘をついた
瀞霊廷に進入してから、そこら中で霊圧のぶつかり合いを感じていた。
混乱する瀞霊廷を、屋根の上を飛び越えて、死神が行る場所から少し離れた、住宅が立ち並ぶ場所に着いた。
ここに来る途中、どこからか花火が上がった。玉屋ー!的な声もした。
あれが何だったのかは、分からないが、この混乱生じて今のうちに行かなければならない場所があった。
もうここには戻らないだろうから、そこへ行くのもこれが最後だ。
瀞霊廷の西側。流魂街との隔たり、墓地が立ち並ぶ場所だ。基本的に貴族のみ。その森の一番奥の奥底に、それはあった。
何も書かれてはいない、名もなき石。それがなんなのか、この瀞霊廷で知るものは少ないだろう。
それでも、ここに眠るという証がほしくて、どうしてもとわがままを言って許してもらったものだ。
現世から持ってきた青紫と白の桔梗とトルコ桔梗が混じった花束をバッグから取り出すと、そっと墓石の前に手向けた。
墓参りには合わないような色合いだけど、今日は今生の別れを言いに来たんだ、そのくらい許して。
あなたは今、幸せですか?
あのときはごめんね。謝る前にあなたは逝ってしまった。
墓石の前でひざを突きそっと手をあわせると、再び石を見上げた。
あなたなら、どうしていたでしょうか。
私のすることは、誰の為なのでしょうか。
ルキアかな?
ルキアを助けたい黒崎一護?
それとも…。
「何をしている。」
今まで緩んでいた気持ちが、一気に引き締まる。
誰かが来る、とは思っていたが、こいつとは。
ゆっくりと、後ろの霊圧を気にしながら立ち上がると、振り返ることな「旅客がこちらに逃げ込んだという情報を耳にし探しておりました。」そう呟いた。
うわ…。
なんと、苦しい言い訳…。
我ながら哀れだ。
もうこれしか思いつかなかったんだよ。
「ここが何なのか分かっているのか。」
そう言って黙った彼から、私はどうやって逃げようか。返事をすることよりも、そればかりが頭を支配し始めた。
「貴様、名は。」
「…十三番隊の疾風と言います。」
「先程、隊長たちに通達があった。
十三隊を名乗る旅禍が現れ、十二番隊隊は気づいている。私が十三番隊のもの出はないことを。そして、旅禍だということを。さて、どうする。私は、護廷隊の隊長に適うだろうか。逃げきれるだろうか。
だけど、逃げ切れなかったら、死ぬ。
今は、選択肢など無い。
やるしかない。
私は自身の正体を明かす気はなければ、死ぬ気もない。
勝ちゃいいだけの話だろ!
ここに来るときに、黒崎が言った言葉が、どこからか聞こえた気がした。