季節外れの桜
「どうした。そのような剣では逃げ切れないぞ。」
「……。」
ガキン、キンと、火花が散るほどに、激しくぶつかり合い斬魄刀。
静かな森には似つかない鋭い音が木霊する。
ズズッと土の上を滑りながら、ようやく動きを止める。いつしか、はかはかと肩で息をし呼吸を正ながら、再びぐっと刀を握りしめた。
ヤバイな。このまま戦っていたら、あきらかに部が悪いのはこちらだ。
長時間この状態は、厳しい。
相変わらず無表情に私を見つめる彼を睨みつけながら、ぐっと歯をかみしめる。
どうする。
この辺はいくら土地勘があると言えど、迷ったら厄介だ。
それに、隠れる場所なんて、森の中のみ居住区に入ってしまったら、逃げきれる確率は今よりもずっと落ちる。
「縛道の三十一、六杖光牢。」
「っ…、断空!」
向かってきた何本もの閃光に、朽木白哉が何をしたのかが分かった瞬間、無意識にそう叫んでいた。
パンパンと光は砕け散り、私の前に大きく透明な壁だけが残る。
危ない。ホッと胸をなでおろしながらも、ジッと白哉を観察する。
自身の縛道が遮られたことが驚いたのか、目をかっと見開いた。
今がチャンスだ、今を逃したらきっと後はもうない。
壁に斬魄刀を突き刺し小さなヒビを入れると、「破道の三十三、蒼火墜。」そう唱えると、思った通り自分がつくった盾諸共、吹き飛んだ。
ゴワッと勢いよく爆風が吹き抜け、土煙が舞う。
メキメキと鈍い音をたてて木々が倒れていく。住居地の裏でこんなことをするのは忍びないが、しょうがない。
爆風を利用して地を思い切り蹴った。
こいつが始解する前に逃げる。
あの刀は、始解されると致し方厄介だから。
「逃がさぬ!」
一瞬そんな声が耳をかすめた。
散れ…
空耳であってほしいが、どうもそうはいかなさそうだ。
ゾワッと背筋に悪寒が走るほどの霊圧。骨がキシキシする。四肢が痛くなりそうだ。
あぁ、今は戦いたくない。これから逃れるためには、今は走るしかない。
横にそれるように森の中に身を隠し、枝を伝って必死に走った。
追いかけてくる霊圧はない。でも、相手は白哉だ。油断はできない。
そのまま森を走り抜け、塀の屋根を伝って、私は瀞霊廷の戦渦に再び突っ込んでいった。