拒絶の先の融解

私の初めての授業は、同じ空座第一高校の一年生の授業の見学から始まった。

化学、物理。
私が現世に来て学んだ学問だ。元々は技局にいた身。


実験は好きだし、何かを探求することにかけてきたから、苦痛に感じることはなかった。

しかし、大学に入って資格を取るまでが大変だった。
高校を卒業しなければならないと知り、高校生と言う物を体験した。ブレザーとプリーツのスカート。
尸魂界にいたら絶対しない格好にある意味テンションが上がったものだ。



それから、何年も採用試験に落ち続け見た目も変わらぬまま、講師という立場で、教員を続けていた。

最低1年、最高3年、の職場が私にとってはベストだったからだ。
一カ所に長くは務められないのは分かっていたから。


他県に渡り点々とし、去年再び十数年ぶりに関東に戻ってきた。もちろん浦原商店にお世話になるつもりで。



教科書を数冊とペンケースと参考書を抱え、本日教師としての仕事に向かう。
スーツでもなく、9分丈の黒のスラックスに深い緑のジャケットに身を包んだ私は、越智先生に教わったとおりの道順で廊下を進み、教科書を片手に、化学室とかかれたプレートの下のドアを開けた。


きりーつ、れーい。



だるそうな日直の号令とともに、ダカダカとイスを引く音が教室を包む。

教卓に教科書を置き、一通り生徒の顔を見渡す。


「えー、はじめまして。
今日は、初日なので自己紹介をお願いします。
で、時間が余ったら簡単な実験をしましょう。
では、私から。」


たいしてひねることもなく同じことをいい終えると、生徒たちに自己紹介を移す。新学期ということで、なにやらまだまだ生徒たちの間でも、距離があるらしい。


「えー、黒崎一護。
好きな教科は特になし。よろしく。」


相変わらずだるそうに最短とも言える自己紹介を終えた黒崎に笑顔を向け、次の子に目を向ける。それから全員が自己紹介をすませることには、授業時間は残り時間が5分。


本当は実験を班ごとにやることは、まだなれない学生生活には、早いうちからの友人が必要だと思ったからで。同じことを協力すれば、自ずと話すようになるし、仲は深まるキッカケにでもなればなぁ、と思っていたのだが、世のなさそう簡単には行かない。



やっぱりなかなか難しい。
まぁ、仲良くは無理だとしても、お互いの顔と名前くらい、覚えておいて損はないはずだし、何より私の経験が物語っているのだから、間違いはないだろうけど……。



じゃあ、今日の授業は終わりましょう。とトントンと教科書を整え、顔を上げると、それを見計らったように、スパッと白く小さな手が上がった。


「えーと…浅野くん。」


教室のど真ん中の机で、立ち上がってこっちを見ている茶髪の少年に、にっこりと頬を緩めて微笑む。


「先生は、彼氏はいるんですか!」


……またか、誰もがそう思ったに違いない。

なぜかキラッキラした目でこっちを見てくる彼に、ピキリ無理矢理口角を上げた。


「今はいません。」
「マジッ「はい、それでは終わりまーす。」


浅野くんが言い終わるか終わらないくらいのタイミングで被せると、さっとこの話を切り上げ、みんなの見渡し日直の声に待った。


back