消えた不協和音
全てが終わり、そして始まった。
朽木ルキアの処刑は白紙に戻り、それぞれが傷ついた体を休めている、と同時に藍染に関する情報収集が始まった頃だろう。
そんなある日。
月が満月となり、青白い光を放つ中私は羽織を着て、1人空鶴さんの家から抜け出した。
いまだにうずくのは、ギンに刺された傷、塞がったはずなのに、なぜかヒシヒシと痛む。
寝てばかりいたせいか、足の筋肉が落ちてうまく走れない。足がもつれて、歩くのさえつらい。だけど、それでもただ歩いて、歩いて、歩き続けた。
裸足だったことに気が付いたのは、流魂街の外れに来た頃で。でも、一度戻ってまた来る気にはなれなかった。
そんなことを気が付かないなんて、足の神経までおかしいのかな。
本当、笑っちゃうよ。
情けない自分に。
悔しくて泣きそうになりながらも、ようやくたどり着いた瀞霊廷の端。
その頃には、月に雲がかかり先ほどよりもずっと薄暗かった。
私が兄と慕った彼との思い出の場所だ。瀞霊廷を見渡せる小高い丘の上。
昔はそこでよく、星を眺めていた。
よく分からないお菓子を持ってきては、私に食べさせようとしていた彼。
ルキアにあげれば、と言えばアイツには危険だ。と言う。私はいいのかよ、と思ったが、本当に大切にしているんだなと思った。
だから私も、あの人に習って妹のように接してみるのも悪くない。なんて、思っていた。
でもそんなある日。
何の前触れもなく、あの人はいなくなってしまった。
死んでしまったのだ。
そして、殺したのはルキアだと聞いた。
虚に飲み込まれ、どちらにせよ助からなかった。とも。
それでも、虚のせいだと分かっていても、どうすればいいか、どうやってルキアに接していけばいいのか分からなかった。
屋敷で1人でいる姿が目に見えて分かっていたし、風当たりも強いルキアを、彼の代わり気にかけたい気持ちはあったはずなのに。私は、守ることも支えることも放棄したのだ。
離してしまったものを掴むように、目の前に広がる星の海へと、手を伸ばした。
隠れて見えなくなった星が、まるで手の中にあるような感覚に陥る。
だけど本当は何もつかめてはいない。
元々何もなかったのだから。
虚しくも空を切るはずだった左手は、横から延びてきた手につかまれ、空中で止まる。
……えっ…。
驚いて手を引こうとすると、捕まれている手はびくともしなかった。
そして、暗やみが包む中、月の光だけが頼りだ。そしてその中で感じた霊圧
それは、あまりにも近く遠い存在の、彼の霊圧だった。
次第に彼の無表情な顔が視界に入り、もう一度腕を引こうとしたが、あまりの力の差に、少しだけ体が浮いた。
……なんで。
なんでこんなところにいるんだ。
心臓が一気に拍動し始め、飛び出そうだ。あぁ、苦しい。
恐る恐る上半身を起こし、捕まれた手を辿れば、暗闇の中に光る瞳とカチッと重なった。
「なんで…いるの。」