星屑めいた絶対零度の花びら

「今日はもう寝ろ。話はまた明日だ。」
「なっ!?ここはどこだ、家に返せ」
「ならん。」
「何で!」
「まだお前を手放せそうにないからだ。」
「は?」

驚いてい白哉を見上げれば、何も言わずにじっと私を見下ろすその眼に灯る熱を見つけ、とっさに視線を逸らした。
どうしてこの人は。

「なぜ泣く。」
「…え?」
「気づいてさえもいなかったのか。」

泣くはずがない。そう思って触れようとした手をおろし、確認することをやめた。もし涙で濡れた手を見て仕舞えば、泣いていることを認めなければならない。それだけは嫌だ。


「…泣いてない。」
「泣くな。」
「だから、泣いてない。」


うつむく私の名を呼んだ白哉は、私の眼の前に座り直した。胡座をかいた足に膝が触れそうなくらい近くに。そして彼は、とても穏やか名を声色で私の名を呼ぶのだ。


「常盤」
「悪かった」
「何に対しての謝罪だ。」
「…全部だよ。」

私があなたと出会ったこと。
私と出会わなかったら、よかったのにね。

顔を上げることなく裾を握りしめた。少なからず静かな怒りが伝わってくる。それを無視するように立ち上がろうとすると、素早く手を掴まれそのまま前に引かれれば、彼の胸に飛び込むような形になる。


「ちょっと、白哉何を。」
「そのような馬鹿げた謝罪などいらぬ。」


そして、グッと肩を掴まれ少しだけ離れた体。


「謝罪を受け入れれば、お前はまたいなくなるのか?」
「え?」
「私の前から姿を消すのか。」

射殺しそうな眼差しを抜ける白哉は、肩を掴む手に力を込めた。

「離して」
「離さない」
「白哉!」


そう続けると白哉の手に今以上に手に力が入ったのが分かった。

「また私を拒むのか。
なぜそこまで自分を追い詰める。」
「え…」
「お前は苦しんだ。そして、断ち切るために、ここに戻ってきたのではないのか。そして、それはもう叶わなんだ。」

白哉の言葉に、思わず言葉に詰まる。
その通りだ。
私は、この3余年に決着をつけたくて、みんなについてきたのだ。

「まったく、言ってくれる。」


そうだ。
彼の言う通りだ。決着をつけるために来た。しかし私は、何も変えることができなかったのだ。

己の手から消えた全てに正面から向き合わされて、崩れそうになる。
地面を両足で押し返して必至に堪えているというのに、彼の方はそんな私を見て頬を緩めた。


その余裕は何?ものすごく癇に障るが、私が彼を詰れる要素は何処にもなく、睨み続けけるしかできない。


「何処にいようと、どんな結果になろうと、何年経とうとお前の信念は変わらないのだな。」


そうどこか嬉しそうにも見えた彼の表情に、眼の奥が熱くなる。

どうしてこの人は、私を引き留めてくれるのだろうか。あなたを裏切ったと言うのに。

私は、取り返しのつかないことをしてしまったのだ。
家を捨てた。
家族を困らせ、一番大切な人をだました。
だから…これでは私はまた甘えてしまう。自分の起こした罪を忘れてしまう。私はこの手に頼ってはいけないのだ。
止めて。


決して許されることはないだろうと思っていた。


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