あやし夜半の星
とりあえず、落ち着こう。
うん、まずは落ち着け。
今どういう状況なのかを理解しなければ、何も始まらない。
ドクドクうるさい心臓をなんとか落ち着かせ、とりあえず自分の部屋に戻ることにした。
手っ取り早いのは、自分の部屋で手がかりを見つけることだ。
ここ以外、もう残っていない。
何から始めるって、とりあえずクローゼットを開けてみよう。
なぜ自分のであろうクローゼットを開ける時、こんなにもドキドキしなければならないのか。
勢いよく開けたクローゼットの中には、私が今まで着ていた服や使っていたバッグは見当たらなく、左側にはタンス右側にはハンガーラックにかけられた服。足元のカゴには、昔から使っていたバッグが置いてあった。
なんというか、もう明らかに昔私が好きだったであろう服ばかり。綺麗に整頓されたその中に、ようやく私は手掛かりその一を見つけた。
「え、…制服?」
ハンガーラックを端から覗いていくと、一番端にかかっていた見慣れない真新しい学校の制服。
灰色のブレザーに、ストライプのネクタイ、白いのシャツとプリーツスカート。
明らかなのは、この制服が昔私が来ていたものではないということだ。私が来ていたの黒のブレザーと赤チェックのプリーツスカートだった。
それから一通り部屋の中を物色しまくったが、手がかりになりそうなものは、さっきの制服と校章らしき絵が描かれた水色の封筒くらいだった。
「…なんもねぇし。」
午前中いっぱい、部屋の中を探しまくって見つかったのは、結局制服と封筒だけ。
これじゃあ、なんも分かんないのと同じじゃんか。
ベッドの上に並べた制服と封筒を、椅子の背もたれを抱え込んで座り睨みつける。
とまぁ、そんなことをしていても、何の解決にならないことくらい、わかってはいるけどこの現実を受け止めるのは、なかなか至難の技であり、ある程度時間が必要そうだ。
つま先で床を蹴って椅子とともにベッドに近づくと、恐る恐るその封筒を手に取り中身を覗き込む。
数枚紙が入っているだけのそれを見つめて、私は封筒の中に手を突っ込んだ。
…梟谷学園転入案内
梟谷?
なにその鶯谷の親戚みたいな名前は。
その紙には、登校日時とクラス担任の教師の名前が書かれていた。
そして冒頭には、町田衣織殿。私宛だ。
どうにも受け止めきれない現実の目の前にして、どうしていいのかわからなくて、つい腕をつねってしまったが、痛い。
どうやら夢ではない。