引き合うさびしさの引力
今生2度目の高1の夏休みが終わり、とうとう新学期が始まろうとしていた。
何年か前に卒業した制服に袖を通し、鏡の前に立つ。
まだいける?なんて思う自分がバカらしくなって、ため息をつく。
タイムスリップをして約2週間。ようやく事態を受け入れる事ができるようになった。
ここは約10年前の世界て、私は16歳高1。兄弟は兄が一人。
ここまでは、以前と全く同じ、両親や兄の年も。
だけど、違っていることも次第にわかってきた。その中でも一番驚いたこと、それはもともと生きていた世界とは少し違うということ。
東京や大阪、北海道、福岡。各都道府県に違いはなかった。走っている鉄道会社も、バスも飛行機も県庁所在地も。
けど、細かな土地の名前は聞いたことのないものがちらほら見つかった。そして、私が住むこの街。囀町は今まで聞いたことのない名前だった。
私は1つここで仮説をたててみた。
以前の世界とは同じ時間軸で進行していた異世界に、なんらかの歪みにより飛ばされた。そして、タイムスリップまでしてしまった。
そもそも、タイムスリップした時点でまた違う時間軸の世界に飛ばされた可能性だってある。
わかることは、元の世界に戻る手がかりが全くないということ。戻れるのかさえも分からない。
「衣織、まだ寝てるの?そろそろ起きないと遅刻…、あら起きてたの?」
ガチャリと開いたドアから顔をのぞかせた母は、目を丸くしてそして私を、上から下まで見つめるとにこりとほおを緩めた。
「前の学校のも良かったけど、梟谷のも可愛いわね。」
そう微笑んだ母は、「ご飯できてるわよ」と部屋を出て行った。
そう言えば、お腹が空いた。こんなことをごちゃごちゃ考えたって、戻れるわけではないし、方法も分からないのだから、とりあえず今はこの世界を生きるしかない。
そう思えるようになってきた。
白い半袖のワイシャツをプリーツスカートにきっちり入れ、靴下はあえてひざ下まで上げた。ネクタイはとりあえず暑いし、カバンの中で。
面倒だけど、2度目の高校生活が始まった。