体育祭種目

「あ、町田!」
「ごめん、遅くなった」
「いいよいいよ、大丈夫だった?」
「大丈夫な訳ない」

そう言って、真田先生から渡されたプリントを机に置いた。それを見てアリスは爆笑した。


「マジで!嘘でしょ、バカ。」
「うるさい。」
「よーし、じゃ、お昼食べよ」
「あー、腹減った」
「私もー」

机と椅子をくるっと回して、アリスと向き合うと、お弁当を机に出す。


「あ、そうだ。これお土産」
「え?何?」
「さっき真田先生から貰った。」
「まじで!煎餅かよ。」
「それ美味しいから食べてみてよ」
「今食べよー」

早速袋を破って煎餅口に放り込んだアリスはニッコリと笑った。

「うまっ!」
「でしょ?」

さすが鬼の真田。うまい煎餅も抑えているのか。
とかなんとかブツブツ言ってるから、思わず笑ってしまった。


「そういえば、今日の6限目HRになったって。体育祭の種目決めちゃうんだって。」
「へー、体育祭かぁ。」


もうそんな時期なのか。
アリスが言っていた通り、今日最後の授業はLHRになったらしく、担任の吉木先生がプリントを配っている。


ぺらりと紙が渡された。委員会に所属していない私にとって、昼休みにプリントがまわってくるのは、初めてだった。
読んでいた本から顔を上げ、プリントの内容を読めば、どうやら今月末に控えた体育祭のプリントらしかった。


「体育祭かぁ…」


ほぅ、なんか懐かしいなぁ。
学年縦割りで4色に分かれてのチーム戦らしい。1から8組を2組ずつ分けて縦割りで行われるらしい。うちのクラスはCで、チームカラーは青。

体育祭とか、木兎さんのためにあるようなものだと、先ほどあったばかりの先輩を思い出した。

張り切る姿が目に浮かぶわ。
豪快に笑う木兎さんを想像しながら、プリントを見つめていると、「そんなにやりたいの?」と、プリントがやってきた方から声がして再び顔を上げた。

「え?」
「めっちゃ凝視してるし、目がらんらん」
「してません。
でも…まぁ、そう、かも。」
「体育祭とか気合入っちゃう?」
「それなりには」
「マジか!私も!」

にっこりと歯を見せて笑ったアリスは、顔に似合わず体育会系らしい。見た目ギャルなのにそのギャップに笑ってしまう。

「衣織、何でる?」
「んー、借り物競争とか?」
「走る系は?出ないの?」
「疲れる」
「疲れてなんぼでしょ!体育祭なんて」
「まぁ…。」


驚くことにアリスは、「私リレー出たいなぁ」なんて、体育祭の目玉とも取れる種目に出場したいらしい。
そこに立候補する勇気、恐れ入るわ。

「そんじゃ、少しはえーけど体育祭の出場種目決めちまうぞー」

授業開始1分前。先生が言い終えると同時くらいに、チャイムがなった。

「あ、そうだ。
カラー対抗リレーは、この間の50速かった順に男女1名ずつ出しといたから、赤葦と町田は金曜の昼休み特B集合な。
じゃ、とりあえずみんな希望出せ。最低一種目は出ろよ。じゃ、学級委員頼んだ。」


言うだけ言って、委員長に丸投げした先生は、端っこに置いてあるパイプ椅子に座ると、テキトーな雑誌を開いた。

え?え、…まって!待て待て待て。
リレー?え、なにそれ聞いてないんですけど。
なんで?


ガヤガヤと楽しそうな声が聞こえ始める中で今この状況を理解できていない私は、愕然としているとくるっとこっちを向いたアリスが、ニヤリと笑っていた。


「アリス、代わっ「無理」
「さっき出たいって言ったじゃんか!」
「出れないって知ってたから言ったんだし。そもそも、体育で本気で走ったのはあんただよ。
まっ、その他の女子が本気で走っても、負けただろうけどね。」


だから、代わりはいない、がんばれ。とものすごくいい笑顔で私の肩をポンと叩いた。


マジで、嘘でしょ。
一週間前の私に、是非とも伝えたい。本気で走るなと。一週間後に地獄が待っているぞと。
最悪だ。

「ほら、衣織。
種目希望書いてこよう、また面倒な奴になっちゃうよ。」
「私リレー出るじゃん」
「あれはカラー対抗だから、別。」
「えー。」

アリスに促され、私は借り物競争に名前を書いた。
ちらっとアカアシくんを見れば、彼は特に表情を変えることなく、何に出るか迷っているなようだった。



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