ホイッスルの音が、やけにゆっくりと体育館に響き渡った。

 俺の腕に触れて、床に落ちたボールが、数回バウンドして、静かに転がっていく。その無機質な軌跡だけが、やけにスローモーションみたいに見えて、俺の網膜に焼き付いた。

 負けた。俺の、俺たちの、高校バレーは、ここで終わった。

 でも、不思議と絶望はなかった。
 全員、持てる力のすべてを、コートに置いてきた。最後の最後まで、一瞬も諦めなかった。それは事実だ。主将として、チームを誇りに思う。
 だからこそ──どうしようもなく、腹の底から、ただひたすらに、悔しいという感情だけが燃え盛っていた。

(……でも、ああ、クソ。…楽しかったな、めちゃくちゃ)

 限界を超えて、全てを出し尽くした。そんな試合ができたことへの、ほんのわずかな高揚感。それが、このどうしようもない悔しさを、さらに鮮やかに燃え上がらせていた。

 ネットの向こうで歓喜に沸く黒色のユニフォームが、視界の隅でちらつく。その中心にいる、かつての後輩…天才セッターの、忌々しい姿も。

 整列して握手をする。監督からの言葉を受け取る。応援席へ挨拶をする。
 身体に染み付いた一連の動作を、俺はほとんど無意識でこなしていた。主将として、チームを率いる人間として、ここで崩れるわけにはいかなかった。

「ありがとうございました!!」

 応援席に目を向けた、ほんの一瞬。無意識に、その姿を探していた。人混みの中で、彼女だけが、まるでスポットライトを浴びているみたいに鮮明に見えた。

 ナマエ──。

 彼女は、泣いていなかった。
 周りで涙ぐむ女子生徒もいる中で、ただ、真っ直ぐな、射抜くような瞳で、俺のことだけをじっと見ていた。その視線が、まるで細い一本の糸みたいに、バラバラになりそうな俺の心をかろうじて繋ぎ止めている。

 俺の高校バレーの、最後の瞬間を見届けた彼女は、一体何を感じているのだろう。「頑張ったね」と思ってくれたのか。それとも、「惜しかったね」と思ったのか。
 その答えを、聞くのが怖くて、でも、知りたくてたまらなかった。

 体育館の出口から一歩踏み出すと、ひやりとした外気が汗で火照った肌に心地よかった。さっきまでの熱狂と喧騒が嘘のように遠ざかり、代わりに耳鳴りのような静けさが頭の中を支配している。

 控室までの通路を歩いていると、視界の先に、ナマエの姿を見つけた。その瞬間、世界から、音が消えた。
 彼女の元へ、ゆっくりと、けれど真っ直ぐに歩き出す。一歩踏み出すごとに、身体の芯で燻っていた「悔しさ」が、熱を帯びていくのが分かった。

「おう」

 後ろから、岩ちゃんの声がした。ナマエが「お疲れ様」と返す、優しい声が聞こえる。

「先行くぞ」
「うん。すぐ行く」

 マッキーへほとんど反射で答えた声は、自分でも驚くほど、感情がなかった。ひらひらと手を振る同級生たちの背中を見送り、その後ろを後輩たちが気まずそうに頭を下げていくのを目で追う。
 やがて、ひんやりとした通路に、俺とナマエだけが残された。

 再び、シン、と世界が静まり返る。

 目の前に立つ彼女を見下ろす。何か、言わなきゃいけない。でも、なんて言えばいい?

 どの言葉も、この燃え盛るような悔しさを、少しも軽くしてはくれない。口を開けば、押し込めたはずの熱い感情が、堰を切ったように溢れ出して、みっともない姿を晒してしまいそうだった。それだけは、嫌だった。
 だから、俺は何も言えず、その場に立ち尽くす。彼女の澄んだ瞳が、俺の心の奥の、一番見られたくない場所まで見透かしているようで、息が詰まった。

「及川」

 俺の名前を呼ぶ、凛とした声。「なぁに」と返した自分の声は、想像していたより柔らかく響いた気がして安堵した。そして。

「お疲れ様」

 一言。

「頑張ったね」でも「惜しかったね」でもない。ただ、静かな、労いの言葉。たった一言だった。なのに、その言葉が、俺の三年間すべてを肯定してくれた気がした。
 この試合の結果だけじゃない。主将としての重圧も、誰にも見せてこなかった泥臭い練習も、勝利への渇望も、全部。

 ああ、この子は、俺の悔しさに同情するんじゃない。俺が戦い抜いた、その三年間を、ただ、認めてくれようとしてるんだ。
 その、あまりにも気高い愛情が、俺の最後のプライドを、いとも簡単に粉々にした。

 彼女の腕を掴み、人目につかない柱の影に引きずり込む。格好悪いとか、みっともないとか、そんなことを考える余裕もなかった。ただ、彼女の温もりに触れたかった。彼女という、唯一の光に、縋りたかった。

「っ…!」

 腕の中に閉じ込めた体は、驚くほど細くて、温かかった。ユニフォーム越しに伝わる熱が、凍りついた俺の心を無理やり溶かしていく。

「……あー……」

 声にならない声が漏れる。

「……くやしいな、ほんと」

 絞り出した言葉は、震えていたかもしれない。情けない。そう思うのに、彼女は何も言わずに、ただ俺の背中に腕を回して、強く抱きしめ返してくれた。
 その優しさが、今は何よりも痛くて、そして救いだった。この子は本当に、いつだって、俺の心を救うのが上手だ。俺が欲しい言葉も、欲しい温もりも、全部くれるのだから。

 ──どれくらい、そうしていただろう。
 ゆっくりと体を離す。

「……ありがと」

 呟くように言ったお礼に、彼女は「ううん」と返してくれた。

「でもさ」

 俺は、ふっと力なく笑った。

「不思議と、『これで終わり』って感じが、全然しないんだよね」

 ああ、そうだ。俺のバレーは、ここで終わらない。
 この悔しさを、この敗北を、俺は絶対に忘れない。これを糧にして、俺はもっと先へ行く。もっと、高みへ。
 ずっと前から、その「高み」への道は、俺の中では一つしか見えていなかった。

 その決意が、燃え盛る炎のように心を灼いた、まさにその瞬間。目の前にいる彼女の存在が、ずしりと重みを増した。

 ──アルゼンチンへ行く。

 その言葉を、俺はこれからナマエに伝えなくてはいけない。
 彼女はいつだって、何も言わずに、ただ、そばにいてくれた。俺の全てを受け止めて、どんなことがあっても真っ直ぐに俺を見つめてくれた。そんな誰よりも愛おしい、この子の隣に、これからも、胸を張って立ち続けるために。

 俺は、俺自身の覚悟を、誠意をもって告げる。それが、たとえ彼女を深く傷つけるものだとしても。

(……だけど)

 俺がその未来を選ぶということは、彼女のそばで過ごせる時間が、もう残り僅かだということを意味していた。



 それから数週間、俺はまるで時が止まったような気持ちだった。
 部活を引退して、バレーボールを手にしない放課後。受験勉強に励むクラスメイトたち。その日常の風景の中で、俺だけが、未来への一歩をどうしても踏み出せずにいた。

 ナマエにアルゼンチン行きを言わなきゃいけないということは、痛いほど分かっている。でも、スポーツ栄養士になるという夢を見つけ、ひたむきに努力する彼女の顔を見るたびに、言葉が喉に詰まる。自分の未来に向かってキラキラと輝いているナマエに、どう言えばいいのだろう。
 彼女といる、この穏やかな時間を、俺の身勝手な夢で、壊したくなかった。

 一緒にいる間も、どこか上の空だったと思う。そんな俺の様子を、彼女が不安げに見ていることにも気づいていた。それでも、俺はこのどうしようもなく臆病な自分と、一人で向き合うしかなかった。

 そして俺は、ようやく覚悟を決めた。
 これ以上、こいつを不安にさせるくらいなら。俺のせいで、ナマエの笑顔を曇らせるくらいなら。ちゃんと、話そう、と。

「──放課後、この空き教室で少し話せる?」

 昼休み、ナマエが作ってくれた弁当を頬張りながら、俺は平静を装ってそう切り出した。いつもみたいに軽い口調で伝えようとしたのに、声が少しだけ固くなったのが自分でも分かった。
 目の前の彼女が、何かを悟ったように一瞬動きを止めて、こくりと頷く。その真っ直ぐな瞳が、俺の覚悟を静かに問いただしているようで、思わず視線を逸らしそうになった。
 ナマエの作ってくれた玉子焼きを咀嚼してるはずなのに、今日だけはその味が全く分からなかった。

 放課後、指定した空き教室で一人、窓の外を眺める。夕暮れのオレンジ色の光が、床に長い影を落としていた。
 扉が開く、小さな音。振り返った先に、彼女がいた。顔が強張っている。その姿を見ただけで、心臓が大きく軋んだ。

「ごめん、呼び出して。……座りなよ」

 椅子に座るよう促して、机を挟んだ向かいの椅子に同じように腰かける。ギシ、と、古い木製の椅子が軋む音が、やけにはっきり聞こえた。

「——……大事な話があるんだ」

 震えそうになる声を必死で抑え込み、切り出した。彼女が、息を呑むのが分かった。
 俺は一度、唇を固く結び、迷いを振り払うように息を吐いた。もう、後戻りはできない。

「……俺、卒業したら…アルゼンチンに行くことにした」

 ──とうとう、言ってしまった。

 ナマエは、驚いたように目を見開いたまま、動かない。その表情を見て、胸が締め付けられる。

「……そう」

 彼女の唇から、小さな声が漏れた。

「そっか…すごいね」

 その、あまりにも平坦な声が、逆に俺の心臓を抉った。

 もっと、何か言ってくれ、と願う。その「そっか」という一言に、どんな感情が隠されているのか分からなくて、息が詰まりそうだった。俺が勝手に遠くへ行くことを決めた、薄情な男だと思われたのだろうか。

「……ごめん。言うの、遅くなって。本当は、もっと早く言わなきゃって思ってたんだけど……お前に言うと、覚悟が鈍る気がして……言えなかった。……ごめん…」

 伝わってほしくて、思わず続けた。
 ナマエを軽んじていたわけじゃない。むしろ、ナマエの存在が、俺の覚悟を揺るがすほど、大きかったんだと。

「……なんで、アルゼンチンなのか、話してもいい?」

 俺の問いかけに、彼女は黙って頷いた。

 小学生の時に見に行った試合にいた、アルゼンチンのセッターであるホセ・ブランコに憧れたこと。そして今年に入ってから、入畑先生のおかげで彼と話をすることが出来て、自分の限界がどこにあるのか、挑戦しようと思ったこと。

 俺の言葉を聞いている彼女の瞳が、静かに揺れていた。

「……及川」

 そして、彼女の唇から紡がれた言葉は、俺の想像を、遥かに超えるものだった。

「別れよっか」
「…………は?」

 頭を、鈍器で殴られたような衝撃が走った。

 なんで? どうして、そうなる?
 遠距離になるのは分かってる。会えなくなるのも辛いだろう。でも、別れる? そんな選択肢、俺の中には微塵も存在しなかったのに。

「な、に言ってんの、ナマエ。冗談きついって……」

 声が、上ずる。息の吸い方が、分からない。

「冗談なんかじゃないよ。…及川が、アルゼンチンに行ったら、私たち別れよう」

 聞き間違いじゃないというように、ナマエはもう一度、ゆっくりと繰り返した。

「……なん、で…遠距離、じゃ、だめ……?」

 縋るような情けない声が出た。でも、そうでもしないと、彼女がどこかへ行ってしまいそうだった。

「…うん。だめ」

 きっぱりとした、拒絶。でも、その瞳は悲しげに揺れていた。

「中途半端に、したくないの。……だって、及川はこれから世界で戦うんだよ? 地球の裏側で頑張る及川の隣に、私はいない。それなのに『付き合ってる』っていう事実だけがあって、それはきっと及川の重荷になる。そんなの、絶対に嫌なの」

 やめろ。

「私は、及川がバレーボールを追う姿が大好きだから。世界で戦う及川も、きっと、すごくかっこいい。だけどそれを、ただ応援するだけの彼女にはなりたくない。それは、及川のためにもならない」

 やめてくれ。

「私は、私が決めた道で、胸を張れるように頑張る。栄養学を学んで、及川みたいに、本気でスポーツを頑張る人を支えられるような人になりたい。…及川も、私のことなんて気にしないで、全部、バレーに注ぎ込んでほしい」

 彼女が語る言葉は、すべて、俺のためだった。

 俺の夢を、俺のバレーを、何よりも尊重してくれている。
 その、あまりにも深く、そして自己犠牲的な愛情が、俺の心をずたずたに引き裂いた。

「……そんなの、無理だよ……」

 俺の喉から、か細い声が漏れる。衝動のまま、椅子から勢いよく立ち上がると、ガタンッと、背後で大きな音が鳴った。

「っ、勝手に! 俺の未来からお前のこと無くすなよ…っ!」
「…及川…」
「……いやだ。……俺は…お前のこと…簡単に忘れられない…。ナマエがいない未来なんて、考えられない…!」

 勝手にすべてを決めたくせに、叫ばずにはいられなかった。近くにいようが、遠くにいようが、俺の未来には、ナマエがいるのが当たり前なんだと思っていた。それは俺の傲慢だったのだろうか。同じ気持ちで、一緒に支え合っていけると思っていたのに。

「……知ってるよ、そんなこと…っ」

 そんな俺の慟哭を聞いて、彼女の瞳から、ぽろぽろと大粒の涙が溢れ出した。

(──なんでだよ)

 そんなに泣くくらい、俺のことが好きなのに。なんで、いなくなる方を選ぶんだ。その涙が、お前の本心じゃないのか。

「だったら、なんで別れるなんて言うんだよ…っ! 俺は、お前のこと重荷なんて思ったこと、一度もない! むしろ、お前がいたから、頑張れたことだって、たくさんあって…!」
「……っ」

 もう、格好なんてどうでも良かった。プライドも、意地も、全部かなぐり捨てて、ただ本音を叫ぶ。
 試合に負けて、最低な八つ当たりをした時も。主将のプレッシャーに潰されそうになって、部屋で泣き言を言った、あの夜も。いつだって、ナマエはそばにいてくれた。壊れそうな俺の心を、その細い腕で、必死に守ってくれた。

(それが、重荷になるなんて…!)

 そんな俺の必死な言葉を聞き、ナマエは、まるで眩しいものでも見るかのように、僅かに目を細めた。何か、とても大切なことに思いを巡らせているような、静かな表情で。

 そして、彼女は涙を零しながらも、首を横に振った。

「……うん、分かってるよ。ありがとう。……でもね。私を傷つけると思ったから、アルゼンチンに行くこと、ずっと言えなかったんでしょう?」
「──っ!」

 その言葉に、俺は息を呑んで、何も言えなくなった。図星だったから。

 そうか。この子は、全部、分かってるんだ。
 俺の弱さも、覚悟も、そして、俺が彼女をどれだけ愛しているかも。全部、分かった上で、俺の背中を押すために、「さよなら」を選ぶんだ。

 なんて、残酷で、優しい子なんだろう。

「きっと、及川がアルゼンチンに行ってからも、たった一人で決断しなくちゃいけない時がたくさんあると思う。その時に、私の存在が、足枷にはなりたくないの」

 一人でも、あなたは大丈夫だと、ナマエの言葉の端々から伝わってくる。

「私ね、及川の中では、バレーが一番であってほしいの。及川の覚悟を揺らす存在に、私がなってるんなら、私は、及川の前からいなくなる。あなたのバレーの邪魔になるのなら、私はいつだって身を引く覚悟でそばにいた。…だからお願い。…行くと決めたなら、もう、振り向かないで」

 彼女の、あまりにもまっすぐな覚悟。それに比べて、俺はなんて弱いんだろう。

「……っ」

 違うと、嫌だと、駄々を捏ねる子供みたいな台詞しか浮かんでこなくて、結局何も言えなくて、力無く俯く。

「……及川のこと大好きだから…離れるのはもちろん、すごくつらいよ。…だからせめて、アルゼンチンに行く日まで、及川の彼女でいさせて。それまでは、今まで通り……たくさん甘えさせて」

 それが、彼女の最後のわがままだと言う。こんな、深い愛のわがままが、あるのだろうか。
 期限付きの幸せという、あまりにも甘い毒。でも、彼女の思いを知ってしまった今の俺は、それに頷くことしかできない。

「……ごめん」

 喉から、絞り出すような声が出た。

 ──ごめん。俺の夢が、お前をこんなに苦しめて。
 ──ごめん。俺が、もっと強い男だったら、お前はこんな選択をしなくて済んだのかもしれないのに。

「謝らないで……及川は、何も間違ってない」

 涙を拭いもせず、彼女は、俺を気遣って微笑む。無理に笑顔を作ってるのなんて、バレバレだった。

「……私は、及川がその道を選んでくれて、よかったって思ってる。……及川が、そういう人だから、私は好きになったんだから」

 その、泣きそうな笑顔を見た瞬間。
 俺の中で、今まで必死で繋ぎ止めていた何かが、ぷつりと切れた。

(──ああ、そうか。そうだった)

 そうだ。この子は、いつだってそうだった。
 周りの奴らが「青葉城西の及川徹」として俺を見る中で、彼女だけは違った。

 保健室で、欠けた爪の手当てをしてくれた時。「試合中じゃなくて良かったね」と、俺の指を、俺のバレーと繋げて見てくれた。
 初めて俺たちの試合を見てくれた時。「本気なんだなって思った」と、俺のバレーへの執念を、真っ直ぐに受け止めてくれた。
 元カノに、俺のバレーへの熱量を馬鹿にされた時でさえ、あんなに震えた声で、言い返してくれた。

 ずっと、ずっと、彼女は「バレーボールをする俺」ごと、そのすべてを包み込んで、愛してくれていたんだ。俺が「及川徹」であることの根幹を、誰よりも信じて、応援してくれていた。

 その、あまりにも大きな愛情の前では、俺のくだらない意地も、強がりも、何の意味もなかった。

「……ずるいよ、ナマエ」

 その細い体を引き寄せ、強く抱きしめる。ずるいのは俺だ。この場面になっても、この温もりを、失いたくないと思っている。でも、彼女の覚悟を、俺が踏みにじることなんて、できるはずがなかった。

「そんな風に言われたら、何も言えないじゃん。……お前が、誰より俺のバレーを応援してくれてるって、分かってるから……。……わかった。…俺の、わがまま聞いてくれたんだもんね……お前の、わがまま、聞くよ」

 唇が、震える。本当は彼女の願いを、わがままだなんて微塵も思っていない。でも、そうやって茶化すみたいに言わないと、この約束が持つ重さに、俺の心が耐えられそうになかったから。

「行く日まで……ううん、行く瞬間まで、……俺の、一番可愛い彼女でいて」
「……うん」

 腕の中で頷く彼女を感じながら、俺はただ、この夕日に染まる教室の時間が永遠に続けばいいと、どうしようもなく願っていた。

xx



メランコリー