紡ぐ言葉は未来への導き


今日は一際、街が活気づいている。

繁華街や大通りには、色とりどりの電飾を使ったイルミネーションやツリーの数々。


そして何より目を引くのは、街の至る所に飾られたクリスマス用の飾り付けだ。

この日のために用意された物なのだろうが、やはり見ていて楽しい気持ちになる。

それは、恭也と七子たちも例外ではなかった。

「恭也見て、すごいよ! 凄くキレイだね!」

七子が興奮気味に言う。

その様子からして、どうやら彼女も初めて見る光景らしい。
確かにここまで大規模な装飾は、初めて見たかもしれない。

普段なら、そこまで気に留めないような些細なことなのに、どうしてか今日の街並みは特別なものに見えた。

「おい! あんま、はしゃぐなって」

素直に感動できるのは良いとしよう。

だが、子供のように目を輝かせて走り回っている七子の場合は少し違う気がしていた。

実際のところ、まだ子供なのだけれど。


しかしそんな彼女の姿を見ていると、微笑ましい気分にもなるし、自然と頬が緩んでしまう自分がいた。

「こら、見失っちゃうだろ?」

そう言って、恭也は七子の手を握った。
彼女は一瞬驚いた表情を見せたものの、すぐに嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「はあーい」

そう返事をしつつも手を離す気配はないようで、むしろ握る力を強めてきた。

(……ったく)

本当に分かっているのか不安になったが、それ以上は何も言わなかった。

きっと自分も同じだから。
彼女と一緒だと楽しくなるし、心が落ち着くのだ。

「よし、七子は良い子だね」

頭を撫でると、彼女はさらに笑みを深めた。



しばらく歩くと、目的地であるカフェテリアが見えてくる。

テラス席ではカップルらしき男女の姿がちらほらと見え、店内にも客は多くおり賑わっているようだ。


「ここ、七子と来たかったんだ」


「すごく可愛いカフェだね!」


そう言いながら入口のおしゃれな装飾のドアを開けると、取り付けられたベルが鳴り、ふわっとした暖かな空気に包まれた。

店員に案内された窓際のテーブルに向かい合うように座る二人。
メニューを開いて注文を済ませると、恭也が口を開く。

「そうだ。七子、プレゼントがあるんだ」

「え? なあに?」

七子は首を傾げた。


すると彼は鞄の中から小さな包みを取り出し中を開くと、そこにはペアのネックレスがあった。


「つけてあげるね」


恭也はそれを手に取り、慣れた動作で七子の首元へつけた。


小さな宝石が埋め込まれた銀のプレートは、お互いのものを合わせるとハートの形になり、英語でそれぞれ『互いを愛すと誓う』と書かれていた。

銀色に輝く二つで一つのそれは、お互いを引き立て合い美しい輝きを放っている。

まるで二人の関係を表しているかのように思えた。


「わあ、すっごく素敵!」


七子はとても気に入ったらしく、首元のそれを眺めては幸せそうにしている。

その姿を見ただけで、恭也は買って良かったと思うことができた。

「喜んでくれて、俺も嬉しいよ」

それから二人は他愛のないことを話しながら食事を楽しんだ後、店を出ることにした。



外に出ると冷たい風が強く吹いており、思わず身を震わせる。

そんな中でも街は変わらず活気付いており、そのせいか人通りも多く混雑している。


はぐれないように手を繋いで歩き出した二人は、イルミネーションを見ながらゆっくりと歩いていく。

「七子、今日は楽しかった?」

恭也が尋ねると、彼女は満面の笑みを浮かべて答えてくれた。

「うん、すっごく! プレゼントもありがとう」

それを見て、恭也もまた幸せな気持ちになる。

こんな時間がずっと続けばいい、とそう思うほど今の時間は彼にとってはかけがえのないものだった。


七子はネックレスを大事そうに手で包むと、恭也を見上げて言った。


「恭也、大好きだよ」


それはどんな言葉よりも、心に真っ直ぐに伝わる想いだった。


「俺も……!」


そして恭也は、七子と同じようにネックレスを手に取り眺める。


それは二人の行く末を示すように、美しく煌めきながら揺れている。





その銀のネックレスがそれ以上に光り輝く指輪に変わったのは、そう遠くない未来の出来事だった。







fin.




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