推しヨ幸せにナレ


これと同一主

サウンドウェーブは泣いていた、自分の推していたアイドルが卒業した為だ
卒業するだけならまだしも恋人を作って消えてしまうだなんてこんなに悲しいことは無い、フワフワのお姫様のようなアイドル衣装にかわいい縦ロールのツインテール甘い耳に残る声色、すべてがサウンドウェーブの理想の"アイドル"だった
過去にも何度かライブに参戦したり、好きでもない人間とブロマイドの交換をしたり、掲示板でアンチを叩きのめしたり、彼の熱中度合いはそこいらのファンでは計り知れないほどだっただろう。
だがしかし彼女が選んだ道ならば・・・と応援しようと彼も胸に誓って自室に置いてある彼女のポスターを泣きながら外した(あまりの悲しみぶりにカセットロン達は彼を慰めたしメガトロンは彼に休暇を与えた普段からかうスタースクリームでさえあまりの落ち込みように声をかけられなかった)

そんな中今日もデストロンは元気にエネルギー強奪に勤しんでいた時サイバトロンに邪魔をされていた
宿敵のブロードキャストとサウンドバトルをする中で彼の動きを止めたのはひとつの声だった

「ダーリンがんばって!負けないで!」

サウンドウェーブは相手の攻撃に弾き飛ばされたせいで背後にいたサンダークラッカーに勢いよくぶつかった、そしてよろけながら立ち上がり声の方向を見ればそこにはフワフワのお姫様のような服でも、綺麗な縦ロールツインテールでもないがあの時ライブステージの上にいた自分のアイドル-神-がいたのだ

「ハニー危ないから隠れててね、こんなやつすーぐ捻り潰すから終わったらハグを頼むよ」
「もちろん、あっついハグでお迎えするからね」

戦場に似つかない二人の声にサイバトロンは「全く戦闘中だぞ」「仲良しなんだからもう」なんて小さく笑っていた
だがしかしサウンドウェーブは違う

「ウググ・・・グギギ・・・ドウイウコトダ!!」
「な、なにがだよ」
「ドウシテ彼女ガ居ルンダ」
「そりゃあ俺っちのかんわいい彼女だからだよ、まぁおたくには関係ないよね」

はっはっはっと高笑いしたブロードキャストを掴みかかったサウンドウェーブの姿に思わず全員が動きをとめる、こうして始まったロボットプロレス(ではない)だが両者1歩も譲らなかった
遠くで戦っていたカセットロン達が集まってきてはその人間の存在を見てはギョッとしてしまう

「サウンドウェーブはあのアイドルの大ファンだったんだよ!」
「いきなり卒業なんてしやがるからショックがでかくて大変だったんだぞ」

その言葉にブロードキャストは思わず驚いて目の前のサウンドウェーブをみつめた、そのバイザー越しの目には憎しみと悲しみが宿っているようにも見えたほどだろう

「キサマガ卒業ノ原因カ」
「なんだよガチ恋勢か!」
「違ウ!アイドルヲ追イカケル1ファンナダケダ」
「てか普段の音楽センス悪い癖に彼女の曲は聴いてるんだな」

そう言われた途端にサウンドウェーブは掴みかかって手を弛めた、そしてブロードキャストに熱く彼女のどこがいいのかを語った
その熱言を聞きながら恋人であるブロードキャストも強く頷いた、彼らは初めて理解りあったのだろう
戦が落ち着いた為か近付いてきた人間に思わずサウンドウェーブは身体が固まってしまう、あんなに小さな身体で自分たちのブレインを震わせるような歌や楽しませてくれるライブをしてくれる彼女に尊敬さえ覚えていた、なんならメガトロンよりも崇拝できるだろう

「あなたのお話聞いてたけどそんなに思ってくれてただなんてとても嬉しいありがとう」
「イインダ、貴方ガ幸セナラ」
「優しい人なのね・・・もっとファンの声に耳を傾ければよかったや、また私がアイドルになったら応援してくれますか?」
「アア、宇宙ノ誰ヨリモ貴方ヲ応援シテイル」
「そういってもらえてよかった」

優しく笑いかける彼女にサウンドウェーブは有頂天だった、毒牙を抜かれたデストロンは退却の合図で戻って行ったがなんだかその日の戦闘はとても晴れやかな気分さえ覚えた

「俺っちよりもサウンドウェーブの方が好きだったりして?」
「なぁに嫉妬しちゃってファンと彼氏は違うでしょ」
「もうそう言われると堪らないなぁ」

優しく抱き上げてくれたブロードキャストに彼女は久方振りのファンサービスが出来たことに喜びを感じた、また舞台に戻るのもありかもしれないと思いながら

サウンドウェーブは機嫌がよくポスターを貼り直していた、そして部屋の鏡の前で嬉しそうに笑う
彼の胸には"私の一番のファン、サウンドウェーブへ"と書かれていた
しっかりと彼女と握手したデータも彼の中で一番重要なファイルの中に鍵をかけて厳重に管理して嬉しそうに彼女のポスターを眺めながら彼女の曲を聴くのだった。

- 55 -
←前 次→