二日目、物珍しいのか部活中にも関わらず皆かわりばんこで声をかけてきた。
交代でちょっとずつ休憩あるのはわかるけど、私にはそんな時間ないからね。今もベンチに座っているといえ、教えてもらったボールの選別に必死だからね。それでも隣にやってきた後輩が無邪気に声をかけてきた。
「みょうじ先輩、なんでマネージャーやろうと思ったんすか?」
「それはね、君の部長が脅しをかけてきたからだよ」
「え、なにやらかしたんすか」
「なにもしてねえわ!たぶん」
ところで君、昨日私のこと痛いって言わなかったかな、と笑顔で聞いたら「すんませんっした」と逃げた。そばで同じ学年であろう子とひそひそしゃべっているが丸聞こえだ。お前そんなこと言ったの、だって先輩に見えなかったんだよ、ですって。いや、どう見ても先輩だろと言おうとしたとき、視線に気がついた。
「……なににやにやしてんの」
「“先輩に見えなかったんだよ”」
「へ!?めっちゃ声似てるね!!!」
「プリッ」
「なんでも真似できるの?」
「嫌な予感するなり」
「あのさ、月曜日の夕方からやってるアニメのさ」
「知らない、まーくん知らない」
誰だよまーくん!!!と突っ込むが無視された。そのままコートへ行ってしまった。なんだよ推しの声でかわいいねとか好きだよとか言ってほしかったのに!
「手が止まっているぞ」
「はっ!すんません」
「たるんどる」
「たしかに最近お尻たるんできた気はしていた」
そうだなとか、そこかよとか突っ込みを待っていたものの何も返ってこないので、ちらりと見やると顔を真っ赤にしていた。え、なんで?お尻って言ったから?うぶなの、この子こんな見た目でうぶなの???なにそれーえーめっちゃかわいい!ギャップ萌えだなあとうはうはしていると丸井君がやってきた。
「幸村君が呼んでる」
「む、そうか」
あーあ、ちょっとお尻確認してよとか言ってからかおうと思ってたのに。
「すげえ顔してたけどみょうじってああいうのがタイプなの?現実の男には興味ないんじゃなかった?」
「すげえかわいい顔してた?それもとからなんだけどな」
「今日も良い天気だな」
「下手くそか」
かわいすぎて直視できないんだな、ポジティブに受け取っておこう。そんなことよりもうボールの選別飽きてきた首も腰も痛い。手のひらでボールを転がしていると声をかけられた。
「疲れましたか?」
「へい、そうっすね」
いつの間に丸井君いなくなったんだろう。注意されてしまったわ、あと少しだしやるか〜とまた別のボールを手にとる。
「地味な作業ですが、そのおかげで私達はベストなプレイができます」
「あ、そうなんですね」
「修復できないボールは瞬発力つける練習に使ってるんです」
「ほおほお」
「だから、ありがとうございます。ちゃんと水分補給してくださいね」
え、なにこの人めっちゃ良い人じゃん!お礼言ってくれたよ!顔をぐわっと上げるともう背中を向けて歩き出していた。まじかーこういう人もいるのかー。てっきりみんな幸村君みたいに、俺のためにやれるんだありがたいだろうとか言うのかと思ってた。いや幸村君も実際は言ってないんだけどね、言われた気になってしまうんだよね、イメージってこわい。
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