これも青春6

やっと木曜日。四日目にもなると、ゴールが見えてきて頑張れる気がした。とりあえず一週間、もとい基本金曜日までの五日間だけ。とりあえず、とりあえず!仕方なしで参加しているだけだから、明日がひとまず私にとって最終日。来週からのことは正直あまり考えていないとういうか、逃げられないならやっているフリでもしようかというか、やっぱりやる気がない。

今のところメリットがない。通学でそれなりに歩くし体育もあるから運動不足解消の為でもないし、頭も普段から使っているからボケ防止の為というわけでもないし……え?マジで使ってますけどなにか。

しいて言うなら私がオタクだということを広められなくてすむこと、かな。いや本当になんでバレたかわからないんだ。イベントでは変装してるのに。

色々考えているうちに気が付いたら連想ゲームになり、そういえば次の新作なににしようかな、なんて考えていた。そしてうっかり記録帳に“猫になっちゃう”と書いてしまった。それを見ていた幸村君が鼻で笑ってきた。

「みょうじさん猫になっちゃうの?」

「なりません」

「いよいよ人間やめるのかと思った」

「それは幸村君に言われたく」

「なに?」

「なんでもないですう」

いろんな意味で危なかった。ネタ忘れてしまいそうだなと思いながら消した。記録のとり方を教えると言っていた柳君を待っていたのに、まさか幸村君が現れるとはね。
先にタオル畳んでおこうかな、と取り込んだままの洗濯籠へ手を伸ばした。タオルは自前なのか柄が全部違う。この妖怪キャラ誰のだろう、なんとなく広げてみたがわからない。柄が違ったら名前を書かなくても自分のはすぐにわかるもんな。
切原君かな〜休日のアニメの為なら早起きできそうだしな〜なんて失礼なこと思っていたら丸井君に声をかけられた。

「みょうじもそれ好きなの?」

「誰のかなと思って。切原君っぽいよね、当たってる?」

「外れ〜俺の!」

「え!アニメ見るの?しかも子ども向け」

「弟がいるんだけど、そのおさがり」

おさがりって普通逆じゃないのかなって思ったけど、兄弟のいない私にはわからない。でも言われてみれば丸井君ってお兄ちゃんって感じがする。あとなんかこのキャラ似合うのは同じ赤色だからかな。

「なんで俺だと思ったんすか?」

「え、戦隊ものとか好きそうだしその流れで見てるのかなって」

「なんすかそれ〜」

「ご、ごめん」

「まあ見てますけど」

「見てるんじゃん!」

心外だと言わんばかりの顔をされたから謝ったのに!ていうかなんで聞いてるんだよ!まだ制服なの切原君だけだし、マイペースだな。声かけた方が良いのか迷っていたら真田君が怒った。

「赤也!さっさと着替えんか!」

「はいいい!」

「はよ着替えないとみょうじにジロジロ見られるぜよ」

「見ないよ!」

仁王君ってば私のイメージどんなんだよ!あ、でも生で肉付きとか見れるなら参考にさせてほしい。その欲のせいでついチラリと見てしまった。

「ほら見とる」

「はっ!つい!」

「俺鍛えてるんすよ〜どうっすか?!」

「切原君やめたまえ」

うっかり見てしまったが、嫌がられるどころか筋肉アピールをしてきた。だから本人が見てほしいんじゃ見るしかないよね〜と思ったのに柳生君が止めに入った。

「みょうじさんも恥じらいをもちなさい」

「え、すんません」

そして何故か私が注意を受けた。なぜだ、腑に落ちん。私は下心ではなくデッサン力を上げたくて見たのに。柳生君こそその発想に恥じらいを持ちたまえ。……とは、言えなかった。だって柳生君良い人だし、言い返したらめんどくさそうだし素直に聞いておこう。

その後もこのタオルは誰のだゲームをしながら畳んだが、終わっても柳君は現れなかった。



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