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【Age 4 】私は4つ子の紅一点である



 可愛い私の天使達を抱きしめていると、ドンガラガッシャーンという音が部屋に響いた。
 あぁまたか、とペロス兄と同じ反応をする。

 妹達の頭越しに音のした方向へと目を向けると、私にとって特別な3人──カタクリ、ダイフク、オーブン──がつみきを再び組み上げているのが見えた。先程からずっと組み上げては勢いよく崩す遊びをしているのだ。

 4歳の男の子だしそれぐらいして当然、むしろやんちゃでいいと思うのだが、

「「「うぇぇぇぇぇえええん!!!!!」」」

 もう少し考えて欲しいものである。
 大きな音にびっくりして、お昼寝タイムだった2歳児と1歳児が泣き出してしまった。特に1歳児組はついさっきコンポ姉が寝かしつけたばかりだったので、いっそうモヤモヤさせられる。そのコンポ姉は今、疲れて寝ている。

「まったくあいつらは……シラタマ、この子たちをまかせていいか? ペロリン♪ コンポートをもう少し休ませてあげたいんだ」
「うん、まかせてペロス兄。さぁて、何してあそぶ?」

 妹達に問いかける。しばらく悩んだ後に、最初に声をあげたのはアマンドだった。

「お、おままごとがしたいけど、いいかなあ?」
「わぁ、すてき! 3人はどう思う?」

 おずおずと口に出したアマンドの意見を全面肯定する。無事に3人も賛成してくれたので役割分担を始めた。
 早々に「シラタマ姉はママね!」と決められてしまったので、妹達の長女役取り合い合戦を待つ間、つみきで遊ぶ3人を眺める。

 パチリと、その内の1人と目が合った。笑って小さく手を振ると、何を思ったのかずんずんと近づいてきた。私の目の前で立ち止まり見下ろしてくる。
 既に私よりも頭1つ分大きいその兄弟は見上げるとかなりの迫力で、いつも少し恐ろしい。もちろん、そんなことおくびにも出さないが。

やってきたその人──カタクリは口を開いた。

「……シラタマもいっしょにあそぶか? つみき楽しいぞ」
「だめ、これからみんなでおままごとするの」

 即答すると、カタクリは分かりやすくショックを受けた顔をした。いやいや、どう考えても断るでしょこれは。

 性別が違うからか、4つ子の中で私だけがあまり似ていない。それでも髪の色が同じ小豆色ということで親近感が湧くのか、3人が遊んでる横で弟妹達の世話を手伝う私に、カタクリは1番話しかけてくる。

どうせいなくなるんだし、気を使わなくてもいいのに。

 前世の次兄と次姉は双子だった。やはり一緒に生まれた存在というのは特別なようで、2人の間には少し違う空気が流れていた。

 だからカタクリも、最低な私なんか放っといてあとの二人と仲良くすればそれでいいのに。私がいなくなった後、3つ子として生きていけばいいのに。

「そうよ! シラタマ姉とっちゃダメ!」
「シラタマ姉はママ役なんだから!」
「!そ、れなら俺もやる、そうだな父親役でもやる」

 早口でそう呟くと私の隣にストンと腰を下ろすカタクリ。つみき遊びはいいのだろうか……?というか飽きたのだとしてもその役選びは間違えてる。

「えぇー!そんな役ないよぉ!」
「いらないよパパなんて! だってころころ変わるもん!」

 そう、私たちは一緒に生まれた兄弟以外は父親が違う。毎年ママは新しい男──新しい種族と結婚して子供を産み、そして離婚している。

 私の持つ常識では太刀打ちできない“当たり前”に頭が痛くなる。今の私たちの義父父親扱いしている男も、あと数ヶ月して赤ん坊が産まれれば用済みとなるのだ。

 シャーロット家の子供にとって、父親という生き物は家族でもなんでもない。かく言う私も、自分の父親がどこの誰かも知らないし、紹介されても実感は湧かないのだろう。そんな事も露知らず、美人なママにメロメロで、義理の子供である私達にも愛想良くする彼らにはいつも同情してしまう。
 人によっては故郷や一族から無理やり引き剥がされて、産まれればポイ。殺されないだけマシだけれど……と、大分私もこの家に毒されてるな。修正修正。

「そーだなー! その役はいらないな!」
「というかママぐらいきれいならともかくシラタマとけっこんしてもなー」

 いつの間にかやってきたオーブンとダイフクも妹たちに賛成する。せめてつみきを片付けてから来いよ……。だが私の口が紡ぐのは全く違う言葉。
 プクーとほっぺたを膨らませて睨んだ。

「ダイフク、何でそんなこと言うの」
「だってそのとーりだから。アレだろ、ママみたいな人のことは“びじん”って言って、お前みたいなやつは“ちんちくりん”って言うんだろ!」
「ママと比べるなよ」
「カタクリの言うとーりだ! かわいそうだろシラタマが」
「!そういう意味じゃ」

 スー、ハー、深呼吸だぞ私。相手は4歳児だ。私はこれでも元“華のJK ”、大人だ。こんな奴の煽りぐらい平気で流せるさ……流……流せ……

「私だってママの子だもん! ぜええったい“美人”になるんだから!」
「ぜええったいシラタマにはムリだろー!」
「ダイフクのバァーーーカ!!!」
「シラタマのバァーーーカ!!!」

 悲しきかな、生粋の末っ子だった私に、煽り耐性というスキルは身につかなかった。何より肉体に精神年齢が引っ張られるのだ、これはもうしょうがないだろう。

……そういうことにしておこう。


 結局、すぐ後に飛んできた「やめなさい!少しは静かにしてくれ、ペロリン♪クラッカー達が寝たら、お楽しみのメリエンダだぞー?」の一声で、私たちのケンカもりんごジュースに流れた。





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