タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
この連載(もどき)のワンシーン「今度こそ」更新
2021/08/29


「サンジさん!」
「ッ、」

 慌てて間に滑り込む。鈍い衝撃は私で緩和されて、だけど人一人分の重さは緩和されずに守るべき人へそのまま伝わった。頭の上で息が詰まる声が聞こえた。ああ、今度こそ、今度こそ、守れた。

「この、ッ! 悪魔風脚粗砕!!」

 ぼ、と炎が燃え上がる音がして私の横を黒く長い脚が通り過ぎて私を覆う障害物を蹴飛ばした。くるりと視界が一転、青い空と金色の雨のような綺麗な髪のカーテンに小さく笑う。

「君はどうしてそう、……!」
「今度こそ、ちゃんと、ほんとに、まもれた」
「もう二度とこの肌を傷付けないでって約束したじゃねェか!」
「わたし、うなずいてない、もの」

 ふふ、と笑って口端が痛みで歪む。
 ぽた、と頬に液体が伝って、瞬く。
 守りきれなかったんだろうか。生暖かい液体が伝う感触にそう思って霞む視界でサンジさんの顔を見上げる。金色のカーテンで見えにくかったけど、さらりと揺れた瞬間、その液体の正体に気付いて硬直する。ぽたぽたと洪水のようにその綺麗な目玉から雫を流す姿に息が止まるかと思った。

「おれは、おれもさ、死ぬくらいしか恩返しできねェって思ってたことあるけど、ちげェんだ、ちげェんだよ、頼むから、おれのことを守りたいって思ってくれるなら、君が君を一番大事にしてくれ、頼むよ、」

 喜んでもらえるなんて思ってない。優しい彼が、私が傷付いて喜ぶわけがない。それは知ってる。でも、身代わりになることくらいしか、役に立てない。彼らの船はバランスが良くて、役割が決まってる。みなが優しいのは当然として、太陽のように光り輝く船長に、道を照らす航海士、狙いを外さない狙撃手、壁を取り払う剣豪、傷付いた体を癒してくれる医者、物語を紐解く考古学者、ゼロから作り上げる船大工、死に触れながら明るい音楽家、そして彼らを生かす料理を作る、いっとう優しすぎるあなた。完璧で、綺麗で、まるで絵画のよう。邪魔をしたくなかった。綺麗なままでいてほしかった。誰一人傷つかないでほしかった。ただの私のエゴ。

「頼むから、ッ」
「泣か、ないで、」

 ごめんなさい、なんて思ってもない謝罪は言えなくて、ただ彼の涙を止めたいのに、冷たく重たくなっていく指先をどうしても持ち上げられなくて意識が薄れていった。