タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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これのゾロ視点
2021/10/27
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鴨が葱背負ってきた。そう思ったと同時に思考回路からそれを追い出す。背負ってきてねェ。そんなつもりはねェ。ふるふると怯えに震えているのがわかるし、その怯えをどうにかしようと縋っているのがおれだということもわかってる。この女の中でおれは不安をとっぱらう安心材料で、頼りにしてる男が腹の中で鴨葱だなんて思ってることを知ったらあまりにも不憫だ。わかってても、何度追い出しても頭の中で鴨葱の言葉がずっとちかちかと点滅していてきちんと会話を繋げられているかなんてわからない。こそこそとどうして騒ぎを起こしたのと責められているのをいなしていたのに、唐突に、ふに、と暖かく柔らかいものが押し付けられて体が強張る。
「っ、おい」
「だめ!」
ぎゅう、と背中に回りきらない手がおれを抱き締めて強く体を押し当てられて体温があがる。鴨葱、ちがう、仲間、そう、仲間だ、鴨の仲間、いや違う、仲間。
混乱する脳内でぐるぐる同じ単語ばかりがちらつく。力一杯抱きしめられてることはわかる。おれが血気盛んに出ていって騒動を起こさないように拘束しようとしてるのもわかる。わかる、が、おれにとっては全く意味をなさない力で少し身動いだだけで吹っ飛んでいきそうな弱さでしかない。のに、何もできずにいるのはこの鴨、鴨じゃねェ、仲間、がおれの心にずっと居座っている女だからで、どんな精神修行より苦行でしかない現状に硬直してしまっているだけ。好きな女と狭い箱の中で、薄暗くて、互いの呼吸しか聞こえなくて、布越しでも体温がわかってしまうほど密着している。そんな状況でただの二十一の男が煩悩を追い払うのがどれだけ大変なのか、この鴨はわかっているんだろうか。
ゾロはモテるのにほんと女の人に興味ないねえ。
暖かな日差しにうとうとしていたおれに投げられた言葉。目を開ければ風に髪を揺らしながら能天気に笑っている馬鹿に眉を顰めたのもつい最近だ。女に興味がないわけじゃねェ。お前以外の女に興味がねェだけだ。まだ野望を叶えられてねェのにうつつを抜かしてる場合でもないのはわかってるから言わなかった。言えばよかった。そうすればどんな馬鹿でも自分が鴨だと自覚して葱まで背負ってこなかったかもしれないのに。少しは意識してこんなふうに目の前の男に抱きついたりしなかったかもしれないのに。
後悔しても遅くて、目の前に鴨がいることはなかったことにはならない。ぱちん、と目が合って、同時にうだうだと考えていた思考回路が弾ける。晴れた視界に映った、頭の後ろに迫るおれの手。あと数ミリで触れてしまいそうなほどの近さにあるおれの剣だこだらけの手。あんなに必死で煩悩を振り払っていたのにも関わらず無意識に小さな頭を覆い隠して引き寄せようとでもしていた、らしい手に気付いて息を呑む。
「さっさと出ろ」
「はいっ!」
手を振り下ろして、何も気付いてない馬鹿に吐き捨てる。バタン、と大きな音を立てて空気が広がる。慌てて後ずさるのを見てからゆっくり息を吐いて手を下ろす。クソ。
「……真っ赤」
「うるせェな黙ってろ」
間抜けにかぱりとあいた口が紡いだ音に罵倒を返す。うるせェな自覚はあるんだよ黙ってろこのクソ鴨。次は我慢してやんねェ。
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