タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
連載(もどき)のワンシーン追加 王子様の心情
2021/11/13


 あっぶねェ、と声に出すことすらできずにおれの盾になろうと前に躍り出たレディの腰を抱いて引き寄せる。レディの柔肌を乱暴な刃が傷付けることはなかったけど、レディの艶やかな髪が刀に触れて風に踊ったのが見えた瞬間反射的に足を燃やしてその刀の持ち主も周りにいた雑魚たちもついでにくるりと舞い宙にかき消す。おれたちの周りだけぽっかりと一瞬安全地帯ができて抱き寄せたレディの顔を伺い見れば眉間に皺を寄せて悔しそうにしていて苦く笑う。

「邪魔をしただけになってしまってごめんなさい」

 あろうことか謝罪を繰り出すレディにどう伝えれば危ないことをしないでいてくれるのかがわからなくて困りながら頭を振る。邪魔なんて思ってない。肝は冷えるし、驚いてしまうけど、おれのことを思ってしてくれている行動なのはわかっているから。だけど褒められた行動ではないことは確かだからどうそれをレディにわかってもらうのかがわからなくて、結局口籠ってしまう。この腕の中にいるレディ相手だといつもはペラペラと回る口がいつもより回らなくて調子が狂う。理由はわかっていて、だけど見ないフリをする。
 だってレディはきっと、おれのためならなんでもしてくれる。孵化したばかりの雛がはじめて目にした生き物に懐く、刷り込みのような感情をおれに持ってくれている。それがわかっていてレディに何かを求めるようなことは絶対にしちゃいけない。おれはレディに自由になってほしいのに。ルフィがぶっ飛ばしたあのクソボスからせっかく自由の身になれたのに、今度はおれがレディの足枷になっている。
 自由になってほしい、なんて言いながら、何度もこの船から逃げようとしたレディを取っ捕まえてしまったけれど、まあ、その、だって怪我してたし、おれのせいだし、うん。怪我が治っても、レディが心の底から自由にならないと羽ばたく姿は見たくないというか。まあ結局、ただの男の醜い独占欲。
 だけどレディが本当に、心の底から幸せに笑いながら怪我も治ったしこの船を降りたいと言うなら、引き止めることなんてできない。だから、悲しいけど、レディが心の底から幸せを感じられる日までは、おれにナイトの役目を務めさせてほしい。のに、どうしたっておれを盾になってでも守ろうとしてくれる勇ましいプリンセスに苦く笑うことしかできない。

「おいこらそこのプリンスとプリンセス! イチャイチャ見つめ合うだけならキッチンにでもいてくださいますぅ?!」

 展望台から聞こえたウソップの声に二人同時に顔をあげる。べちべちと精密な軌道で敵船を沈めていく姿を見て、周囲を見渡す。ルフィもゾロも船に乗り込んでいるのかサニー号の甲板は静かで、ナミさんやロビンちゃんは既に優雅に敵船に襲われる前に飲んでいたお茶の続きをしていらっしゃる。なるほどあとはもう男どもに任せても大丈夫そうだ。ウソップのお言葉をありがたく受け取ることにして、レディを抱き寄せていた手を一旦離して膝をつく。きょとん、と不思議そうにおれを見るレディににっこり笑う。

「ダイニングまでエスコートさせてくれる?」

 相変わらず手を差し伸べられることに戸惑いを隠せないレディだけど、おずおずと手を重ねてくれるから頬が緩んだ。

「待ってサンジほんとにキッチンに引っ込んじゃうの?! ねえ?! 手伝って?!?! えっうそほんとに?! さ、さ、サンジく〜ん?!?!」

 ウソップの嘆きは聞こえなかったふりをする。だっててめェ、んなこと言いながらちゃんと敵船沈めてんじゃねェか。大丈夫だろ。