タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
これの続き
2021/11/30


 ぼとぼとと雨のような雫の音が聞こえて、ナミちゃんの天気予報が外れるわけないのになあ、なんて思いながら視線を音の先に向ける。外が見える窓に視線が辿り着く前に音の元凶を見つけて目を見開く。サンジくんの目が流す涙が雨のように床に落ちる音。思わず驚いて読んでいた本を机に放り出して号泣しているサンジくんのそばへ駆け寄って頬に手を伸ばして涙を拭う。拭っても拭っても溢れ出る涙は全く止まらなくて焦る。焦って焦って、サンジくんのネクタイを思い切り引っ張って引き寄せる。うわ、と悲鳴が聞こえたのは私の胸元からで、ぎゅ、と頭を抱え込んで抱きしめる。

「どうしたの、何か悲しいことあった? 大丈夫、私たちがついてる。心配しないで、大丈夫だよ」

 胸元がどんどん生暖かく、しっとりと濡れていく感覚がわかる。それでもサンジくんを離す気になんてなれなくて、柔らかな金色の髪を撫でつけながら事情もわからず慰めの言葉を口にし続けた。ありきたりな言葉しか思いつかない不甲斐ない自分に悔しくなる。抱き寄せる頭がもぞもぞと動き出して、思わず強く抱きしめすぎてしまったかなと反省しつつほんの少し力を緩めて頭を撫で続けていれば、位置をずらして目を覗かせたサンジくんの上目遣いとバッチリ目があって瞬く。相変わらず滝のように流れる涙。だけどなんだか、違和感。

「ご、ごめん、レディ、ちがうんだ、」

 口元はいまだに私の胸元に隠れているせいでくぐもったサンジくんの声。だけど、こんなにも涙に溢れているのに声色はいつもと変わらない。不思議に金色の丸っこい頭を撫でさする手が止まる。

「前の島でレディが買ってきてくれたやつ、間違って食っちまって、その、」

 ……前の島で私が買ってきた?

「あの、その、食うと三十分くらい涙が止まらなくなるや、ぅぐ」

 サンジくんが言葉を紡ぎ終える前に勘違いしたことに気付いて羞恥に全身が火照るのを止められない。体が火照り動悸が激しくなって、だけどそれ以上にサンジくんの涙が何かに傷付いて流れているわけじゃないことにほっとして、サンジくんを胸元に抱いたまま力が抜けていく。腰が抜けたと思ったのにお尻に衝撃が来ないのは私に頭を抱きかかえられて自由に身動きができないのにどうにかこうにか腰を支えてくれてゆっくりと地べたに下ろしてくれたからで、ぺたりと床に抜けた腰を落ち着かせながらサンジくんの頭は離さない。だって、あんな馬鹿みたいな勘違いをして、どうやって顔を突き合わせればいいの。
 そういえばあの時、サンジくんも私がどうして泣いているのか理解した瞬間崩れ落ちていた。サンジくんも私を心配して、それから腰が抜けるほど安心してくれた。あのときのサンジくんの気持ちが痛いほどよくわかって、どうしたらいいのかわからなくなる。私の力なんかより、サンジくんの力の方が強いのは当然で、きっとつらい体勢のはずなのにそれでも私の胸の中から無理矢理逃げようとなんてしないサンジくんの優しさに、きゅうっと胸が変な音を立てた気がした。